本は脳を育てる ~北大教職員による新入生への推薦図書~ 

推薦者 :  山下正兼      所属 :  理学研究科      身分 :       研究分野 : 
タイトル(書名) 生殖細胞 : 形態から分子へ
著者 岡田益吉, 長濱嘉孝編著
出版者 共立出版
出版年 1996.4
ISBN 4320054393
北大所蔵 北大所蔵1 
クリックすると北大OPAC(蔵書検索)で該当図書を別窓で表示します。

推薦コメント

 我々ヒトも含め、多くの多細胞生物の一生は卵と精子が合体(受精)することから始まる。卵や精子は生殖細胞と呼ばれる。生物を形づくる多くの細胞(体細胞)が、個体そのものを維持するために働くのに対し、生殖細胞は生 命を次世代に受け渡すために働く。卵や精子は高度に特殊化(分化)した細胞だが、ある意味では未分化なままで止まっている(あらゆる種類の細胞になりうる能力を持つ )細胞でもある。
 このように、生殖細胞は「分化した未分化細胞」という一見矛盾する性質をもつ不思議な存在であるが、このおかげで生物は限られた個 体の寿命を越え、種を存続させることができるのである。

 また、生殖細胞を作る過程(減数分裂)で起こる遺伝子の組換えと、受精による遺伝子の混合は、生物に多様性を与え、今日の多種多様な生物を生み出した原動力の一つになっている。生物には自分と同じものを殖やすことと、自分とは違うものを生み出すという二つの相反する性質が共存する。生殖細胞が作られ、合体するしくみを知ることは、この生命の連続性と多様性を保証するしくみを知ることに直結し、生命の本質に迫る重要な研究課題の一つである。
 
 生殖細胞形成や受精を扱う研究分野を生殖生物学と呼ぶが、本書では13人の専門家が、主に脊椎動物を材料にした研究を中心に、生殖生 物学の最先端を解説している。トランスジェニックマウスに代表される遺伝子工学の最新技術や近未来技術など、かなり高度な内容を含むが、随所に各著者の「生殖細 胞への思い」が感じられ、非常に興味深い。生物学に関心をもつ学生はもちろん、生物としての自分の原点を知りたいという方にも一読を薦める。

※推薦者のプロフィールは当時のものです。

Copyright(C) Hokkaido University Library. All rights reserved.
著作権・リンクについて  お問い合わせ

北海道大学附属図書館
北海道大学附属図書館北図書館