本は脳を育てる ~北大教職員による新入生への推薦図書~ 

推薦者 :  清水誠      所属 :  文学研究科      身分 :       研究分野 : 
世界のことばの多様性に目を向けよう
タイトル(書名) 世界のことば・出会いの表現辞典
著者 石井米雄・千野栄一(編)
出版者 三省堂
出版年 2004
ISBN 4385151784
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推薦コメント

 同じ人間に生まれて、外国語ほど不思議なものはありません。大学生になったことを実感するのは、多くの場合、英語以外の外国語を学ぶという、時には苦しい体験を通じてではないでしょうか。現在、世界で起こっているさまざまの問題も、ことばを通じてとらえ直すとき、別の角度から問題の本質が見えてくることがあります。世界の言語は本当に多様であって、異質な歴史的文化的背景の一端を垣間見るとき、だれでも大きな驚きを覚えることでしょう。 
 ことばそのものは、すべての話者にとって本質的に固有で、しかも平等なものであるはずです。わたしたち日本人には、日本語という、わたしたちにとってはかけがえのない母語があります。一方、今日、英語はいわばリングワ・フランカ、つまり、異なる言語の使用者相互の意思疎通をはかるための道具としての役割を広く果たしています。英文学やイギリス経済を専攻するために英語を学ぼうという人は、むしろ特殊な例外というべきでしょう。そのかたわらで、その他、数千の世界のことばたちは、固有の文化と社会という重みを背負った形で存在しています。ところが、その数千もの世界の実像は、じつに複雑でとらえにくいものです。加えて、人間というものは、物事を単純にパターン化して理解しようという潜在的な欲求をもっています。ここに、言語という存在が持つ、もうひとつの非常に重要な問題点が隠されているのです。
 大学で学ぶことができる外国語の数は、きわめて限られています。本書は、アジアとヨーロッパの59のことばについて、日常のあいさつの表現をカナ発音と発音記号(IPA) を添えて対照し、各言語の執筆者の手による全59の「こだわりエッセー」を収録したものです(ちなみに、私はアイスランド語とオランダ語を担当しています)。本書で扱われた59の言語は、世界のことばのほんの一握りにすぎません。そこから、人類の遥かないとなみをたくましく想像し、現代世界のかかえる諸問題を新鮮な目で眺め直していただきたいと思います。そして、物事には多様なとらえかたというものがあり、わたしたちはステレオタイプ的な片寄った考え方に、無意識のうちに染まっているということを認識いただきたいものです。だれでも手軽に手に取れる内容にまとめられた本書は、大学生活での最初の手引きとして、きっとみなさんの興味を高めてくれことでしょう。
なお、同じく三省堂から、同じ編者による『世界のことば辞書の辞典ヨーロッパ編』、『同アジア編』があります。

※推薦者のプロフィールは当時のものです。

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