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近年における生物学の発展はめざましいものがある。急速に発達した分子生物学的手法により、生命現象を分子の相互作用として捉え、その根本原理を物理・化学反応の言葉で明らかにする ことが可能になった。 特に最近は、生物の発生や脳の機能といった複雑な系でも分子レベルの解析が進められており、発生生物学や神経生物学は今、最も脚光を浴びている自然科学分野の一つである。
本書は現代の発生生物学におけるバイブルと呼べるもので、発生生物学を志す学生には必読の書である。また、それ以外の自然科学を志す学生にとっても本書から得るものは多いと思われる。
著者自身は発生生物学というよりも、むしろ科学史が専門と聞く。つまり本書は、発生生物学における諸問題を第三者的立場で冷静に解説したもので、まさしく「おか目八目」という言葉がふさわしい。
本書の構成は広範かつ網羅的で、専門家の手によるものによく見られる内容の著しい偏りは認められない。教科書としてはもとより、発生生物学という研究分野の概略を知るのに本書は最適と思われる。
なお、ここで紹介した日本語版は原書 (Scott F. Gilbert, Developmental Biology) の第二版を訳したものである。将来、発生生物学を専門にしたいと考えている学生には原書の最新版を読むことを薦める。 |