セミナー員室は,学術情報センターの本館1階,研修課長室の隣の旧小会議
室である。我々研修員がお世話になる研修課の事務室にも近く,コピー機のあ
る事務機器室や図書室にも近い,良い部屋であった。ここで,机,椅子,端末
(Xステーション)を一人一台与えられ,研修中は朝9時から夕方5時までこ
の部屋で過ごすこととなる。セミナーは,大きく前期と後期に分けられる。前
期は講義とワークステーション実習が中心である。受けた講義は必ずレポート
を書かなければならなかった。レポートの内容は,課題が決められていればそ
の課題について,課題が無い場合は講義の内容をまとめて,提出することにな
っていた。提出は電子メールで,と先生に指定された講義もあった。講義のレ
ポートの他に週間レポートの提出も義務づけられていた。
講義のレポートおよび研修レポートの作成には,研修課長室にあるワークス
テーションに接続されたXステーションを使う。ワークステーションやUNI
Xに慣れることが研修の目的の一つだからである。橋爪先生,杉本先生による
ワークステーション実習では,基本的なUNIXシステムおよびUNIXのコ
マンドの説明,ブラインドタッチの修得から,ワープロ代わりのエディター
(mule)の使い方,電子メールの使い方,LaTeXを使った文書の整形
の方法など基本的なUNIXの使い方を教わり,一通りのレポート作成のため
の作業をUNIXワークステーションでできるようになった。また,ワークス
テーション実習の一つとして,使っていないハードディスクを借りて,自分達
でケーブルのコネクタを作成して接続したこともあった。研修課題のデータを
保存するハードディスクの容量が途中で足らなくなったためである。
講義は,前期の前半までは週2〜3回の,後半は週1回のペースで行われた。
講師は学術情報センターの先生方と,外部の4名の先生方だった。講義の内容
は,以下の通りである(講義順)。景浦先生:「図書館情報学の現状と課題」,
内
藤先生:「論文の電子投稿と学術情報システム」,宮澤先生:「目録所在情
報サー
ビスの今後の展開」「文字コード概論」,小野先生:「学術情報流通の
国際化」,
安達先生:「電子図書館システムの今後の展開」,浅野先生:「ネ
ットワークシス
テムの今後の展開」,越塚先生:「新 NACSIS‐IRの展
開」,根岸先生:
「学術研究動向の計量的把握」,國井先生(リコー):「こ
れからの図書館情報シ
ステムとDBMS」,石井先生(図書館情報大学):「
大学図書館サービスの今後の展開」,吉田先生(横浜国立大学):「『電子図
書館』構想と著作権法上の問題点について」。また,その他に,日本科学技術
情報センターの見学もあり,実際の抄録作成の現場を見ることができた。
大部分の講義は,セミナー研修生だけで受講したが,いくつかは,「平成7
年
度総合目録データベース実務研修会(第2回)」と重なったため研修生の方
々と
一緒に講義を受けることができ,少しは解放された気分になった。学術情
報・
資料の電子化・ネットワーク化・国際化への図書館の対応というのが講義
の中
心となるテーマであった様に思う。学術情報センターの内藤先生や図書館
情報
大学の石井先生のように,資料の電子化に伴う流通形態の変化によって,
図書
館の存在意義が薄れることへの危機感から,図書館が積極的に学術情報の
流通
に参加することの必要性を講義で話された先生もいらっしゃった。また,
セン
ターの安達先生のように,電子図書館という新しい機能で対応する方法も
あり,
対応の方法も講師の先生によって様々であり,図書館の変革期,変化の
過渡期
にあることが改めて実感させられた。
後期は,「個別研究」として各個人の研修レポートの作成が研修の中心とな
っ
た。また,「個別研究」だけでなく,図書館情報大学で開かれたディジタル
図書
館のワークショップに堀口さんと参加することができた。ワークショップ
の内
容は,かなり専門的な内容が多く,理解できないことの方が多かった。し
かし,
鹿児島大学の堀口さんのおかげで,筑波大学の大庭さん,データベース
実務研
修会に来ていた図書館情報大学の上原さん,筑波技術短期大学視聴覚部
の図書室
の土屋さんを紹介していただくことができ,また,筑波大学や図書館
情報大学
の図書館を案内していただき,非常に有意義に過ごすことができた。
研修員それぞれの研修課題は,忽那:「目録システムと外字管理」,堀口:
「O
PACのための主題検索支援シソーラス」,鵜澤:「インターネット向け
画面型
検索インターフェースの設計」である。「学術情報センターニュース」
(第35
号)でも紹介されているが,以下に簡単に紹介する。
忽那さんのレポートは,学術情報センターの目録システム中の外字を丹念に
分析し,その分析結果から,外字管理の問題点や新しい文字コードとしてJI
SX0221を採用された場合の影響について述べたものである。
堀口さんのレポートは,目録データ中の件名と書名の単語を切り出して,関
連の深い件名中の単語と書名中の単語をリストにして,OPACの検索の支援
用のシソーラスの作成とその評価について書かれている。
私のレポートは,Javaというプログラミング言語を使用して,インター
ネット上で提供されている検索インターフェースを設計することを試みたが,
結果として,試みで終わってしまい,完成までは至らなかった。この研修テー
マの実現の手段として使った,Javaはアメリカ合衆国のSun Micr-
osystems社によって1995年5月に発表された,オブジェクト指向
のプログラミング言語である。
冒頭にも書いたが,約5カ月という,振り返ればやはり長い研修であった。
だが,日常業務から開放され,よい講義を聴け,研修テーマだけに集中できる
という,またとない贅沢な貴重な時間であった,と思える。日頃の勉強不足の
ため,気持ちばかりが焦り,この時間を有意義に使えなかったことが,今とな
っては残念に思われてならない。
最後になりましたが,このような研修の機会を与えてくださった職場の上司
の方々および同僚の皆さん,また,研修中大変お世話になった研修課をはじめ
とする学術情報センターの職員の皆さん,個別研究の指導をしてくださった橋
爪先生をはじめ,センターの先生方,また見学先で案内をしてくださった皆さ
んに,この場をお借りしてお礼を申し上げます。ありがとうございました。