学術情報センターセミナーについて

          情報システム課目録情報掛 鵜澤和往

 平成7年度学術情報センターセミナーが,平成7年11月6日から平成8年
3月15日までの約5か月間開催された。セミナーの研修生は,京都大学から
忽那一代(くつな かずよ)さん,鹿児島大学から堀口裕著(ほりぐち ひろ あき)
さん,そして私の3人であった。今回のセミナーは,昭和61年度以来 の開催
であり,「試行的」に実施された。

 セミナー員室は,学術情報センターの本館1階,研修課長室の隣の旧小会議
室である。我々研修員がお世話になる研修課の事務室にも近く,コピー機のあ
る事務機器室や図書室にも近い,良い部屋であった。ここで,机,椅子,端末
(Xステーション)を一人一台与えられ,研修中は朝9時から夕方5時までこ
の部屋で過ごすこととなる。セミナーは,大きく前期と後期に分けられる。前
期は講義とワークステーション実習が中心である。受けた講義は必ずレポート
を書かなければならなかった。レポートの内容は,課題が決められていればそ
の課題について,課題が無い場合は講義の内容をまとめて,提出することにな
っていた。提出は電子メールで,と先生に指定された講義もあった。講義のレ
ポートの他に週間レポートの提出も義務づけられていた。

 講義のレポートおよび研修レポートの作成には,研修課長室にあるワークス
テーションに接続されたXステーションを使う。ワークステーションやUNI
Xに慣れることが研修の目的の一つだからである。橋爪先生,杉本先生による
ワークステーション実習では,基本的なUNIXシステムおよびUNIXのコ
マンドの説明,ブラインドタッチの修得から,ワープロ代わりのエディター
(mule)の使い方,電子メールの使い方,LaTeXを使った文書の整形
の方法など基本的なUNIXの使い方を教わり,一通りのレポート作成のため
の作業をUNIXワークステーションでできるようになった。また,ワークス
テーション実習の一つとして,使っていないハードディスクを借りて,自分達
でケーブルのコネクタを作成して接続したこともあった。研修課題のデータを
保存するハードディスクの容量が途中で足らなくなったためである。

 講義は,前期の前半までは週2〜3回の,後半は週1回のペースで行われた。
講師は学術情報センターの先生方と,外部の4名の先生方だった。講義の内容
は,以下の通りである(講義順)。景浦先生:「図書館情報学の現状と課題」,
内 藤先生:「論文の電子投稿と学術情報システム」,宮澤先生:「目録所在情
報サー ビスの今後の展開」「文字コード概論」,小野先生:「学術情報流通の
国際化」, 安達先生:「電子図書館システムの今後の展開」,浅野先生:「ネ
ットワークシス テムの今後の展開」,越塚先生:「新 NACSIS‐IRの展
開」,根岸先生: 「学術研究動向の計量的把握」,國井先生(リコー):「こ
れからの図書館情報シ ステムとDBMS」,石井先生(図書館情報大学):「
大学図書館サービスの今後の展開」,吉田先生(横浜国立大学):「『電子図
書館』構想と著作権法上の問題点について」。また,その他に,日本科学技術
情報センターの見学もあり,実際の抄録作成の現場を見ることができた。

 大部分の講義は,セミナー研修生だけで受講したが,いくつかは,「平成7
年 度総合目録データベース実務研修会(第2回)」と重なったため研修生の方
々と 一緒に講義を受けることができ,少しは解放された気分になった。学術情
報・ 資料の電子化・ネットワーク化・国際化への図書館の対応というのが講義
の中 心となるテーマであった様に思う。学術情報センターの内藤先生や図書館
情報 大学の石井先生のように,資料の電子化に伴う流通形態の変化によって,
図書 館の存在意義が薄れることへの危機感から,図書館が積極的に学術情報の
流通 に参加することの必要性を講義で話された先生もいらっしゃった。また,
セン ターの安達先生のように,電子図書館という新しい機能で対応する方法も
あり, 対応の方法も講師の先生によって様々であり,図書館の変革期,変化の
過渡期 にあることが改めて実感させられた。

 後期は,「個別研究」として各個人の研修レポートの作成が研修の中心とな
っ た。また,「個別研究」だけでなく,図書館情報大学で開かれたディジタル
図書 館のワークショップに堀口さんと参加することができた。ワークショップ
の内 容は,かなり専門的な内容が多く,理解できないことの方が多かった。し
かし, 鹿児島大学の堀口さんのおかげで,筑波大学の大庭さん,データベース
実務研 修会に来ていた図書館情報大学の上原さん,筑波技術短期大学視聴覚部
の図書室 の土屋さんを紹介していただくことができ,また,筑波大学や図書館
情報大学 の図書館を案内していただき,非常に有意義に過ごすことができた。

 研修員それぞれの研修課題は,忽那:「目録システムと外字管理」,堀口:
「O PACのための主題検索支援シソーラス」,鵜澤:「インターネット向け
画面型 検索インターフェースの設計」である。「学術情報センターニュース」
(第35 号)でも紹介されているが,以下に簡単に紹介する。

 忽那さんのレポートは,学術情報センターの目録システム中の外字を丹念に
分析し,その分析結果から,外字管理の問題点や新しい文字コードとしてJI
SX0221を採用された場合の影響について述べたものである。

 堀口さんのレポートは,目録データ中の件名と書名の単語を切り出して,関
連の深い件名中の単語と書名中の単語をリストにして,OPACの検索の支援
用のシソーラスの作成とその評価について書かれている。

 私のレポートは,Javaというプログラミング言語を使用して,インター
ネット上で提供されている検索インターフェースを設計することを試みたが,
結果として,試みで終わってしまい,完成までは至らなかった。この研修テー
マの実現の手段として使った,Javaはアメリカ合衆国のSun Micr-
osystems社によって1995年5月に発表された,オブジェクト指向
のプログラミング言語である。

 冒頭にも書いたが,約5カ月という,振り返ればやはり長い研修であった。
だが,日常業務から開放され,よい講義を聴け,研修テーマだけに集中できる
という,またとない贅沢な貴重な時間であった,と思える。日頃の勉強不足の
ため,気持ちばかりが焦り,この時間を有意義に使えなかったことが,今とな
っては残念に思われてならない。

 最後になりましたが,このような研修の機会を与えてくださった職場の上司
の方々および同僚の皆さん,また,研修中大変お世話になった研修課をはじめ
とする学術情報センターの職員の皆さん,個別研究の指導をしてくださった橋
爪先生をはじめ,センターの先生方,また見学先で案内をしてくださった皆さ
んに,この場をお借りしてお礼を申し上げます。ありがとうございました。



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