平成14年度北海道大学附属図書館講演会記録
「FRBR(書誌レコードの機能要件)と目録への概念モデリングアプローチ」(要約)



筑波大学図書館情報学系助教授 谷口祥一


 現在の目録が抱える各種の問題群を整理し適切な対応を図るために、目録の設計(および問題解決)の全体をいくつかの段階に分けて捉える考え方が広く採用されている。複数の段階化が可能であるが、大きくは概念設計とそれ以降のレコード/データ項目設計等に分けることができる。そのうち特に前者の段階に関わる議論が近年盛んに行われている。概念設計で構築されるモデルの代表例がFRBRと呼ばれるものである。これはIFLA(国際図書館連盟)が組織した研究グループによる成果であり、1997年に最終報告がなされている。目録の基底に関わる議論であるため、各種の問題を考える上でも、その理解は有用であるといえよう。
 FRBRはモデル記述言語としてE-Rモデルを採用しているため、目録が対象とする書誌的な事象(多様な情報メディアが形成する世界)を、必要な実体群、個々の実体を構成する属性群、さらには実体間の関連群を規定することでモデルを示している。実体群は全体として3グループに分けられているが、特に書誌的な対象物を直接表す第1グループの実体群(work, expression, manifestation, item)がその定義や機能を含めて問題となる。加えて、FRBRはこれら設定した属性群・関連群の妥当性を検証するため、別途、利用者タスクを4種定義し、個々の属性・関連に対していずれのタスク達成に有用であるか重要度評価を試みている。
 同モデルは現行の目録(書誌レコード)作成処理に基本的に整合するが、現行処理方式との間で一部相違する部分を含んでいる。例えば、実体expressionは現行では明確な扱いがなされておらず、現在、可能な処理方式の検討などが行われている。
 FRBRは完成度が高いモデルであるが、唯一のモデルではない。特定の資料種別に特化したモデルがFRBRの展開形として、場合によっては必要となろう。同時に、FRBRと同レベルのモデリングにおいて、それとは異なるモデルの提案や検討も併せて必要とされよう。筆者自身は、manifestationに換えて、expression(テキストレベル実体)を基盤としたモデルの提案および検討を行っている。
 



◆次の記事へ移る  ◆前の記事へ戻る    ◆目次へ戻る   ◆ホームページへ戻る