農学部・高岡文庫の目録データベース化
目録担当者の徒然
 
   どんな仕事にも多かれ少なかれ余得的な楽しみがあるのではないでしょうか。さいわい図書の目録作成作業も時間に追われない限りは時々楽しいことや発見がある仕事です。
  現在行っている古い個人文庫の整理作業にもそれがあります。高岡文庫は、農業経済学教室の先生で第2代農学部長及び第3代北海道帝國大学総長を務められた高岡熊雄先生の寄贈になるものです。19世紀末から20世紀前半の農業経済学、農政学、植民学、協同組合学等の分野の和書800冊、洋書300冊程度が収集されています。洋書はベルリンに遊学されていた頃に集められたためか、ドイツ語資料が中心です。一般の和洋書については整理を終え、図書館システムの端末で検索していただけます。パンフレットや小冊子類の整理には着手したばかりですが、北海道開発や満蒙関係資料を中心に約3000冊あります。特に第1期北海道総合開発第1次5か年計画についての資料は高岡先生が委員をされていた関係からか資料の層が厚いという印象を受けます。
  パンフレット類は謄写版のものも沢山あります。私が子供の頃はまだ小学校のプリント印刷にいわゆる「がり版」が使用されていましたから、見たこともないというほどではありません。でも意外だったのは謄写版なのは昭和20年代で、大正時代や戦時中は案外きちんと(?)活字で印刷されていたことです。戦時中にもまして戦後の数年間こそ物資が少なかったと聞いたことがありますが、本当にそうなのだなあと実感しました。またあるときは、「糖業改良意見書/新渡戸稲造」のパンフレット、あるいは抜きずりのようなものを見つけました。現代かなづかいに直したものが「新渡戸稲造全集」(教文館刊)の第4巻でも見られ、オリジナルではないかもしれませんが、この形では他ではあまり見られないのではないかと思います。高岡先生の自筆のノートもしくは論文の下書きらしきものもあるのですが、署名がなくてはっきりしないのが残念です。  
  などなど、手は黙々と動かしつつも、ちょっとした発見に心を弾ませて整理を進めています。   農学部の書庫内に配置しております。北海道経済史等にご関心のある方はどうぞ一度ご覧ください。
  

(農学部図書整理掛  小林流美子)