附属図書館長就任所感 
 
                                                    附属図書館長  井上 芳郎  
                                                           
  平成13年5月1日付けをもちまして、副学長を拝命、附属図書館長を兼ねることになり
ました。私は慶応義塾大学医学部を卒業後、臨床医にはならずに、解剖学を専攻し、縁あ
って昭和53年から本学医学部解剖学第一講座を担当してきました。慶應の解剖学教室
時代は論文や教育研究の資料を集めるために医学図書館をよく利用しました。また、母
校の文学部には全国に先駆けて図書館学科が設置されており、その卒業生による、蔵
書検索、文献検索、コピー、相互貸借などのサービスは、有料にしろ、大変優れており、
これもよく利用しました(皆、女性であったことも若かった私には魅力の1つでしたが)。
私の研究分野は脳のグリア細胞に関するものでしたので3つほどのキーワードを対象
にしてIndex Medixから文献パンチカードを作る作業を北大に赴任する時まで司書の方
に依頼していました。そのカードは数千枚に達したと思いますが、今、カードの山を見る
につけ、現在の電子化されたデータベースの時代では前世紀の単なる遺物の感があります。  
  図書館の重要性は文字が発明された古代文明の時代から、連綿として長い歴史の中で語られ、受け継がれてきました。特
に、紙と印刷技術が発明された後の図書館は人類の知の伝搬そして集積と保存に大きな役割を果たしてきました。そして、近
年、まったく新しい図書の媒体として「電子文書」が登場し、その伝搬方法、保存方法などの利便性から今や教育研究はもとより
全ての社会活動において必要不可欠のものとして認識されています。附属図書館長になり、私が解剖学教室に入った時代に、
若い司書の手仕事で行われていた様々な図書館サービスが、コンピュータとインターネットで簡便に行われている現状をまの当
たり見ました。また、5月末に開催された国立大学図書館協議会理事会やILL、DDSなど専門用語が標準語のように使われる特
別専門委員会の雰囲気にも触れました。このわずか1ヶ月の執務で、大学において「知の館」として教育研究の中心的な役割を
果たしてきた図書館が、古くからある伝統的な図書館機能を維持しながら、先端技術を利用した新しい図書館機能に再構築す
る作業が進 んでいることを肌で感じました。因みにILLがInterlibrary Loan(図書館間相互貸借)、DDSがDocument Delivery 
System(文書をファックスやインターネットなどを使って互いに配送するシステム)と判るまでにはしばらく時間がかかりました。
  本年6月26日−28日に、北海道大学附属図書館が世話大学として、国立大学図書館協議会総会を学術交流会館で開催
しました。現在図書館が直面している諸問題を討議し、その結果を実行に移すわけですが、その運営について各大学の図書館
員の方々熱心に討論し、また、連携良く作業を進めている状況には感心すると共に、新米の図書館長としても、その強力なバッ
クアップに意を強くしているところです。 
  図書館が大学の知の中心であることを学生・教職員の皆さんが常に意識して、大いに利用することを期待して、附属図書館
長就任の所感とします。


◆次の記事へ移る
◆目次へ戻る
ホームページへ戻る