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考古学という学問がある。人間の社会を人間が作りだす「モノ」、つまり物質文化資料を通して復元しようという学問である。博物館などに足を運んだことのある人ならば、古い年代順に土器や石器が並べられて、どのように太古の時代から現在まで私たちの歴史が移り変わってきたのかを見たことがるであろう。あの歴史の多く、文字のない時代、物質文化に基づく歴史の復元の多くは、考古学の資料によって復元されたものである。
しかし、考古学は単に容器や道具がどのくらい古いのか、何千年前なのかを単に推定するだけのものではない。またただ容器を形や装飾の違いから分類して整理するだけの学問でもないのである。時代を知り、分類するだけならば古物学にしか過ぎない。
本書では、遺跡を、そして遺跡から出土する様々な資料を観察することよってモノに対して意識的、無意識的に製作者や使用者がこめるメッセージを読み取ろうとしている。そこに生きていたヒトのリアルな生活の復元を試みている。
考古学の過去の社会へのアプローチの一つの手法を知るのに適した本である。歴史や考古学に関心をもつ諸君へ一読を薦める。 |