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私がこの本に出会ったのは、つい最近です。それは、このところ落語に興味を持ってきたことに関係しています。著者の立川談春は、5年前に亡くなった立川談志の弟子です。
談志は、名言、迷言、暴言の多い落語家でした。名言としては、「修行とは矛盾に耐えることである」、「己が努力、行動を起こさずに対象となる人間の弱みを口であげつらって、自分のレベルまで下げる行為、これを嫉妬という」など、短い文で人間の行為の本質を的確に捉えたものが多いです。この本には、その談志の弟子である談春の修業時代からの苦労話が、たくさん詰まっています。
私は、もう一度20歳代に戻りたいかと聞かれると、戻りたくないと答えます。なぜならば、社会人として、そして再び大学に戻った院生として、自分の中での価値観が定まらないまま、混沌とした日々を過ごしていた時代だからです。でも、この本を読むと、この時代は、自分にはよくわからないけれど、妖しく、危険な、でもとても大切な時代だと、あらためて感じます。 |