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グローバリゼーションは、国際社会とは関係がない私たちの日常にも影響する。こちらの都合や好き嫌いにかかわらず、勝手に影響してくるのがグローバル化であって、自治体が意図して進めていく国際化とは大きな差がある。大学の近くの保育園には、異なる国々の子供たちが通う保育園をよく見かけるが、地域が好んでインターナショナルスクールを誘致したのではない。立地する大学の教職員、留学生の影響で結果的にそうなったのだ。
このようにグローバル化の中では、新しい文化が遠慮なく地域に入ってくる。しかしその一方で、固有の伝統文化の維持は難しくなってきている。現在の地域は常に世界からの影響受け、また同時に地域文化を守る使命を負わされる。その中で、どちらに与することもなく、調整してゆく方法を議論するのが本書である。
文化人類学者である渡辺は、グローバリゼーションと文化の関係をベースに、多様な議論を展開する。グローバリゼーションは飼い慣らすことができるという彼の主張は、影響を受けるだけではなく、巧みに影響をしのげるという提案である。その際に、文化をソフトパワーとして用いる文化政策が効果的であり、グローバル化の中で対立しがちな国際益と国益の両立を目ざす「啓発された自己利益」の確立を提案している。この難しい時代のグローバル化政策を学ぶには、本書が欠かせない。 |