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この本は、東北大震災で被災した宗教学者の山形孝夫氏と、現代思想のあり方を問い続けてきた哲学者の西谷修氏との対談である。表題を見ると、現代の日本を直接の対象としているようであるが、むしろ対談者のお二人の中心問題は、(制度的)キリスト教世界の成立とそれが世界に何をもたらしたかということにあり、その延長線上で、ある時点から道を踏み外し始めた世界と、「死者の口封じ」の道具と化してしまった宗教への危機感が語られる。東北大震災はその具体的な危機の露呈の現場として考察され、その危機的状況からのどのような救いの道があるかは、山形氏の”つぶやき”のような形でしか語られない。しかし、そこまで読んでおそらく読者は、東北大震災をはじめとしてここ10年あまりの間に世界中で起こった様々な事態が自分と無関係なものではないことに気づかされるであろう。多くの、特に若い人に読んでもらいたい。 |