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現代哲学、あるいは哲学史に於ける「現代」というのがなに/いつを指すのかは色々議論があるであろうけれども、(ニーチェを別にすれば)20世紀以降の西洋哲学のかなりの部分が目指そうとしたことは、ヒュームの哲学を練り直し、彼が問題としてことを問い直して現代に甦らせようとすることだったと言って良い。(例えば、ジョン・デューイはそのことをはっきりと述べている。) ヒュームは、哲学史の教科書的に言えば、懐疑論者でありイギリス経験論の完成者であるなどと言われるが、-そう見ることも可能であるとしても-彼が目指したのは日常的な経験をいかに概念化して人間の知識形成の方法的基盤とするかということであったのであり、この本の中で試みられている様々な思考実験を読むとヒュームがいかに丹念に人間の知識のあり方とその限界を考え抜こうとしていたかが分かる。使われている概念の理解に多少手こずることはあっても考えながら読んでいただくことをお勧めしたい。ここから現代の様々な哲学的思惟(日本の近代哲学なども)を理解する手がかりが得られると思う。 |