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僕が大学時代に教えを受けた先生方の半数以上は、旧制高等学校の卒業生だった。旧制高校は、戦後は新制大学(の一部)になり、僕ら新制高校卒業世代は知識としてそういうものがあったという形でしか認識していないのだが、実際に旧制高校生活を送った先生方にはその後の人生のスタイル(というと安っぽく聞こえてしまうが)を決定するような大きな影響力のある教育機関だったらしい。最早体験的に知ることのできない、そうした旧制高校の魅力とそこで学生生活を送った著者自身の内面的な成長過程、そして、思わず笑いを誘う、あるいは人生の意味を真剣に考えさせるエピソードの数々は時代を超えて心に響くものを持っている。
僕は北杜夫の作品が大好きで、小学校6年生のときに『どくとるマンボウ航海記』を読んでからずっと愛読してきたが、この作品は数ある北杜夫の著書の中で僕にとってはベストワンであり、今でも授業のネタに使ったりしている。是非長く読み継がれる本であってほしいとの願いを込めてここに推薦したい。
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