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この本は、まさに「古典」という名にふさわしい有名な本だから既に読んでいる人が多いかと思うが、今の学生は(ああ、これもまた「古典」的な説教口調だ!)「古典」をあまり読まないらしいので推薦する意味はそれなりにあるだろうと思う。
僕が小学生の頃は、雑誌『子供の科学』が毎月発刊されるのが待ち遠しく、またあかね書房から『少年少女最新科学全集』が刊行され、所謂”科学読み物”が一つの隆盛を迎えていた時代であった。その時期にこの『ロウソクの科学』と初めて接したのであるが、小学生が読むには少し手強かった。僕は、日下実男訳の旺文社文庫版(今は廃刊)で読んだのだが、最後まで読み通せなかった記憶がある。今あらためて読み返してみると(勿論昔と今の知識量の違いはあるが)、ロウソクという身近なものを通して化学的現象のメカニズムを色々なデモンストレーションと共に説き明かし、説き進めていくファラデーの語りの見事さに深い感動を覚える。特に、酸素、窒素、炭素の存在を明らかにしていく実験と説明の手際の良さは、研究者だけでなく(どのような科目を教えるにしても)教育者も大いに見習うべきものと考える。科学/化学に関心がある人だけでなく、教育者を目指す人にも分野に拘わらず是非読んでほしいと思う。 |