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第二次世界大戦後のアジア諸国の経済的台頭を可能にした条件の一端を、コロンボ・プランをはじめとするイギリス主導の戦後国際秩序構想から明らかにしようとした、政治経済史の画期的業績である。著者がイギリス帝国史の第一人者ということもあり、コモンウェルス体制の維持・再編に向けた戦後イギリスの生存戦略が、旧帝国からの旧植民地への所得移転や開発援助を通じて、アジア諸国の脱植民地化と(多くが開発独裁的な形態での)国家形成を後押ししていくなかば逆説的な力学が、英米のみならずインドの文書館史料も利用して興味深く分析されている。帝国秩序における戦前と戦後、帝国秩序と国際秩序の交錯、経済成長と民主化の関係、といった主題を考えるうえでも、多くの示唆を提供するだろう。 |