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西欧文明が事実上グローバル・スタンダードとして作用しつつある今日において、その相対化を図る意味からも、西欧文明の由来を探る作業は重要である。それはギリシャ文明に直線的にさかのぼるとイメージされがちだが、実際にはギリシャ文明はまずアラビア世界に伝えられ、そこからヨーロッパ世界にもたらされたものであること、そのため、西欧社会が実際にはアラビア文明に多くを負っていることを本書は教えてくれる。ここから導かれうる示唆は決して一様ではない。しかし、西欧文明に単純に反発するわけでもなく、洗脳されるわけでもないという透徹した態度が可能となろう。そのギリシャ文明自体がエジプト文明の影響下にあったとするマーティン・バナール『黒いアテナ』(金井和子訳、藤原書店)も−影響の度合いについては争いもあるが−1つの文明を絶対視しようとする呪縛を解きほぐしてくれる。
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