北分館の機能充実のために

附属図書館長 原 暉之


大学図書館は、大学の教育・研究を支える最も基本的なインフラの一つであり、しかも全学に関わるインフラである。そうした教育・研究基盤としての大学図書館を整備するには、全学的な協力のもとで知恵や工夫を出し合うことが求められていると思う。
北海道大学附属図書館はこの度、平成9年10月29日に第170回(平成9年度第3回)図書館委員会を開催し、議題「北分館の機能及び整備について」を審議した。結論としては、北分館の存続が確認されるとともに、その機能充実を図ることが了承され、これをうけて附属図書館では今後、従来にも増して北分館の利用環境を改善するための取り組みを進めて行く運びである。
北分館の「存続」は、ある意味で当然のように思われよう。全学の教室使用状況調査によれば、1週当たり教室使用数(今年度前後期平均)は札幌キャンパス全体で107、高等教育機能開発総合センターで34、従って全学における授業の約30%が高等教育機能開発総合センターで展開されていることは間違いない。この数字だけ見ても、高等教育機能開発総合センターと同じゾーンに立地する北分館に教育支援の面で大きな役割が課せられていることは、今や明らかである。
しかし、今から2年半前の平成7年4月に旧教養部が廃止され、学部一貫教育体制に移行したとき、状況は今日明白であるようなものでなかったのも事実である。おそらくそのような状況を一つの背景として、平成7年10月24日開催の第161回図書館委員会で了承された「附属図書館将来構想に関する基本的合意事項」は、「基本的には北分館を中央図書館に統合する」ことを掲げていた。
北分館に現在求められている要請に対応し、その機能充実を図るには、2年前の「基本的合意事項」の見直しから出発する必要があったことをご理解いただくために、この間の経緯についてまとめた資料(第170回図書館委員会に提出したもの)を以下に転載することをお許し願いたい。

北分館の存続について

(第170回図書館委員会資料)
平成7年10月24日の第161回図書館委員会で了承された「附属図書館将来構想に関する基本的合意事項」は、その第2項で「基本的には北分館を中央図書館に統合する」ことをうたっている。
これに先立ち、図書館委員会に附属図書館将来構想検討小委員会が設置されたのは同年5月16日の第159回図書館委員会においてであった。同小委員会は、7月10日の第1回会議、8月3日と8日の理系及び文系図書館委員懇談会を経て、9月28日の第2回会議で原案を策定し、その報告を受けて、10月24日の図書館委員会で了承されたのが上記「基本的合意事項」である。
当時、本学は学部一貫教育体制への移行、高等教育機能開発総合センターの発足から間もない頃であり、一般に全学共通教育実施体制のあり方、特に全学共通教育を実施するに当たっての施設計画は未確定であった。上記第2項に「ただし、初年次向けの全学教育が、今後も旧教養部ないし北キャンパスで行われる場合には、学習や教育の便を考慮し、学習図書室(開架図書室)を引き続き北キャンパスに残す」との但し書きが付されたのは、当時の先行き不透明な状況を背景としていた。
その後、全学共通教育に係る施設計画は「学部一貫教育実施準備委員会第一専門委員会施設計画ワーキンググループ」等で検討され、それを踏まえて全学のキャンパス・マスタープラン委員会は種々審議の結果、フレッシュマン教育は主として旧教養部敷地で展開することが確認され、平成8年度末までに策定された「キャンパス・マスタープラン96」では、高等教育機能開発総合センターを中心とする敷地が全学教育ゾーンに指定された。
また、以上の経緯に関連して、「キャンパス・マスタープラン96」の最終稿(平成9年2月)では、未定稿(平成8年10月)にみられた「新営の中央図書館は、分館を統合する一館体制とし」の文言が削除された。これは、上記「基本的合意事項」第2項但し書きの趣旨を生かし、第2項本文を事実上修正したものと理解することができる。
平成9年度に入り、高等教育機能開発総合センター予算・施設委員会の下に「庁舎整備計画推進ワーキング・グループ」(委員長:渡邉暉夫理学研究科教授)が発足して高等教育機能開発総合センターの改修を含む全学共通教育のための施設計画について検討が重ねられ、また全学の施設・環境委員会の下に北分館長をも一員とする「施設計画(全学教育・情報処理教育)推進専門委員会」(委員長:土岐祥介工学研究科長)が設置されて、同じ問題を全学レベルで検討する体制が作られつつある。
本学におけるフレッシュマン教育の展望に関連した北分館の機能及び施設のあり方をめぐっては、図書館北分館委員会、附属図書館新営検討小委員会でも検討されてきた。
5月28日の第119回(平成9年度第1回)北分館委員会では「高等教育機能開発総合センター改修に伴う北分館施設について」が議題に取り上げられ、この件は6月18日の第168回(平成9年度第1回)図書館委員会で北分館長から報告されている。
また、9月8日の第6回新営検討小委員会では、北分館の存続について館長から提案と提案理由の説明があり、意見交換が行われた。これを受けて9月11日の第121回(平成9年度第3回)北分館委員会では、「北分館の当面の機能と将来像について」の議題の下に、①メインの機能として、低学年次学生を対象とする学習支援機能、②副次的な機能として、北分館周辺諸部局の高学年次学生・院生及び教官を対象とする学習・研究支援機能及びレファレンス機能を充実させ、併せて高度情報化時代に即した学習支援機能を高める方向で、北分館の存続を図ることが分館長から提案され、了承されている。
以上の経緯を踏まえ、上記「基本的合意事項」を見直し、北分館の機能と施設のあり方に関し北分館委員会で了承された方向で北分館の存続を図ることを本委員会にお諮りしたい。なお、附属図書館の将来構想については、引き続き新営検討小委員会で検討作業を続けることをお願いしたい。
(はら てるゆき,スラブ研究センター教授)


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