附属図書館の将来構想


            附属図書館長   三本木 孝


 平成7年10月24日に開催された第161回図書館委員会において,附
属図書館将来構想検討小委員会から報告を受けた「附属図書館将来構想に関
する基本的合意事項」及び「新中央図書館の機能,施設の概要」が了承され
ました。その骨子は次の2点です。
 
(1) 図書館を最適地を得て新築する。
(2) 現在の北分館の機能を統合し,単一館の体制とする。
 

附属図書館将来構想に関する基本的合意事項


1.附属図書館に将来にわたって十分なスペースの書庫及び保存書庫を確保
 し,また,懸案の電子情報サービス機能を充実させ,併せて学習図書館設
 備を拡充させるため,現在の附属図書館本館の増改築ではなく,中央図書
 館を新営する。
 
2.そのため基本的には北分館を中央図書館に統合する。
  ただし,初年次向けの全学教育が,今後も旧教養部ないし北キャンパス
 で行われる場合には,学習や教育の便を考慮し,学習図書室(開架図書室)
 を引き続き北キャンパスに残す。
 
3.新中央図書館は,全学的利用の便を考慮すると同時に,他方で,既に図
 書業務を統合し,また,図書業務の統合を予定している文系部局の便を考
 慮して,文系部局に隣接した場所に設置することとし,渡り廊下などでこ
 れと接続させる。なお,具体的な設置場所は,今後,いくつかの候補地の
 中から全学のキャンパス計画を考慮しながら決定する。注1)
 
4.新中央図書館の新営は,附属図書館の基準面積を活用して計画すること
 とし,各部局からの面積の提供を求めない。また,新図書館構想に伴って
 各部局からの職員の提供は求めない。ただし,図書業務の統合に伴う定員
 の配置換についてはその限りではない。注2)
 
5.新中央図書館の利用開始に当たっては,これまでの利用規程などを見直
 すとともに,中央図書館と図書業務の統合を行っている部局については,
 部局図書室での返却・更新手続を可能とし,図書輸送サービスの実現も図
 る。
 
6.現在,北分館に図書業務を統合している言語文化部が,将来,新中央図
 書館から著しく遠隔の場所に新営された場合には,同部局の研究や教育に
 不便を生じさせないよう配慮する。
 
7.新中央図書館には,従来どおり,特に,大学院生,助手,外国人客員研
 究員,名誉教授などを対象とした閲覧個室を設ける。また,書庫の図書あ
 るいは視聴覚資料などの教育への活用の便宜を図るため,演習室等を設け
 る。
 
注1)この一館への統合は,現在の文系・理系の各部局の基本的配置を前提
  としており,これが抜本的に変更される場合には,計画自体を再検討し
  なければならない。
 
注2)新中央図書館は,今後,未統合の部局図書室の統合が可能となるよう,
  十分な書庫を確保するが,具体的な統合計画は,新営計画とは切り離し
  て,当該部局と附属図書館の協議に委ねられる。
 
 以上の結論に達した理由を補足説明します。
 
1)なぜ,改築・増築ではなく新築なのか。
 
  現在の本館・分館とも部分増築を 重ね,最も古い部分は本館は36年,
 分館は25年を経過しています。単に 古くなっただけではなく,古い部
 分の周りに増築したため,古い部分の大改 造,解体が困難であり,本館
 ・分館とも現在地では増築の余地がありません。また,最も古い部分から
 解体し改築しようとすれば工事中の仮図書館が必要となりますが,その間,
 図書資料を収容できる代わりの施設がありません。また,建築期間中のサ
 ービス機能縮小も不可能と思われます。
 
2)なぜ分館の統合なのか。
 
  今後の学部一貫教育の展開充実が期待される中で,現在の分館の存続意
 義が薄くなることが予想されます。一方,開館時間の延長・休日開館,図
 書館機能の強化・高度化の要請に対して,職員数・資料・機材のどれをと
 っても零細な図書館は対処できず,機能の分散を極力避ける必要がありま
 す。なお,合意事項第2項に記された学習図書室について単独の図書室が
 適当か,より総合的な学習支援機能として集約されるべきかは今後の検討
 が必要です。
 
 今後,新施設の具体的な内容は図書館委員会内で検討される予定です。
「合意事項」第1項に示されている以下の2点は特に重要です。
 
1)学習図書・参考資料を含めた開架図書室。十分なスペースと夜間・土曜
 日利用に適した環境(照明,温度)の整備。
 
2)保存書庫とバックナンバーセンター。現在,全学に分散している稀用図
 書・一定年数を経た雑誌の一括保存とハードコピー・ネットワークによる
 コピー配送サービス。集約保存を前提とすると学内で複数購入している雑
 誌の製本にかかる経費の節減も可能です。今後15〜20年間の保存に対
 応する規模の書庫が求められます。
 
 その他の機能を含めたキーワードを以下の表に要約します。これも図書館
委員会で検討されたものです。

┌───────────────────────────────────────────────────────────┐
│                 新 中 央 図 書 館 の 機 能 ・ 施 設                   │
│┌─────────────────────────────────────────────────────────┐│
││         新中央図書館:新しい時代に対応する学術情報サービス及び研究・教育支援環境の提供         ││
│├────────────┬───────────────┬───────────────┬────────────┤│
││  中央図書館の機能  │伝 統 的 図 書 館 機 能│ 電 子 図 書 館 機 能 │ 施 設 ・ 設 備  ││
│├────────────┼───────────────┼───────────────┼────────────┤│
││1.資料の収集・保存  │○物理的媒体資料       │○電子的媒体資料       │○書庫         ││
││            │ (図書,雑誌,視聴覚資料) │               │○保存書庫       ││
││            │               │               │○電算機室(各種サーバ)││
││            │               │               │○メディア工作室    ││
│├────────────┼───────────────┼───────────────┼────────────┤│
││2.資料の利用提供   │○閲覧・貸出         │○全ての情報の統合的利用環境 │○各種閲覧室      ││
││            │○文献複写          │○ドキュメントデリバリー   │ ・研究図書閲覧室   ││
││            │○相互貸借          │○ネットワークの活用     │ ・学習図書閲覧室   ││
││            │               │               │○総合情報ターミナル  ││
│├────────────┼───────────────┼───────────────┼────────────┤│
││3.情報利用支援    │○レファレンスサービス    │○学術情報利用研修      │○研究個室       ││
││            │               │○情報ナビゲーション     │○グループ研究室    ││
││            │               │               │○学術情報研修室    ││
│├────────────┼───────────────┼───────────────┼────────────┤│
││4.情報の発信     │○印刷物(利用案内等)    │○ネットワーク上での提供   │○学内LAN      ││
││            │               │ (北海道大学独自DB等)  │            ││
│├────────────┼───────────────┼───────────────┼────────────┤│
││5.管理・運営     │○全学図書館(室)との連絡調整│○図書館サービス及び業務の  │○事務室        ││
││            │○部局との図書業務統合    │  ネットワーク化      │○会議室        ││
││            │               │○行政事務システム化     │            ││
│└────────────┴───────────────┴───────────────┴────────────┘│
│┌────────────┬───────────────┬───────────────┬────────────┐│
││部局図書室等      │○研究図書館         │○図書館サービス及び業務の  │○部局図書室等     ││
││            │○学習図書館         │   ネットワーク化     │ サービスステーション ││
│└────────────┴───────────────┴───────────────┴────────────┘│
└───────────────────────────────────────────────────────────┘
 
 これまで図書館委員会で審議された将来計画としては理系分館構想検討委
員会報告(1988年館報第75号)があります。現在の本館が「人文社会
系の学習研究図書館として機能することが将来的に期待」されていた状況の
下で,「図書館の機能の重点が移っていること,現実の問題として効率的な
予算の運用が必要である」ことを認識し,“理系分館”に求められる機能と
して
 
1)境界・共通領域の図書雑誌の収集と調整
2)科学技術関係の参考調査機能の体系的な整備
3)情報センター機能
4)複写センター機能(集中管理を前提)
5)異分野の基礎的学習用図書館機能(基礎的図書の集中整備)
6)保存図書館機能(古い図書雑誌の一元化)などが挙げられています。
 
 また,“理系分館”の実現により図書資料の重複購入・校費で購入した図
書の私蔵化の回避,検索サービス担当者の資質向上,夜間開館の実現が可能
となることも期待されています。
 理系部局の図書室との連携については,「部局学科の図書室のサービスと
施設の位置付け,ある程度の統合にともなう職員の配置などを含め,今後検
討と合意が必要である」とされています。
 上に挙げられた中で電子化によるサービスはすでに向上の一途をたどって
います。その他の機能を含め,“理系分館”が新施設に統合実現するものと
期待します。
 新図書館の建築場所には全学のキャンパス計画との整合性が求められます。
現在,図書館・大型計算機センター・情報処理教育センターなどの情報担当
施設がキャンパス内にどのように置かれるべきかが学術情報委員会の検討課
題とされ,その結果がキャンパスマスタープラン委員会で審議される予定で
す。大学の情報環境整備を進めるには情報担当施設間の連携が不可欠で,将
来を見据えた計画が求められています。
 
 小委員会の結論を得るにあたり御努力いただいた石坂委員長,寺尾副委員
長はじめ委員各位に心からお礼申し上げます。
 
     

   附属図書館将来構想に関する検討の経緯


平成7年5月16日 第159回図書館委員会

┌────────────────────────────────┐
│        北海道大学附属図書館将来構想          │
│        検討小委員会の設置について           │
│                                │
│1.目的 附属図書館の将来構想について検討し,その結果を報告書 │
│     としてまとめ,図書館委員会に報告する。        │
│2.構成 館長                         │
│     分館長                        │
│     文学部,教育学部,法学部,経済学部,言語文化部,スラ │
│     ブ研究センターの図書館委員会委員のうちから3名    │
│     理学部,工学部,大学院地球環境科学研究科,低温科学研 │
│     究所,電子科学研究所,触媒科学研究センターの図書館委 │
│     員会委員のうちから3名                │
│     医学部,医学部附属病院,歯学部,薬学部,農学部,獣医 │
│     学部,水産学部,免疫科学研究所,医療技術短期大学部の │
│     図書館委員会委員のうちから3名            │
│     その他館長が適当と認めた者 若干名          │
│                        (以下略)   │
└────────────────────────────────┘
 
 ・中央図書館の新営について検討するため,附属図書館将来構想検討小委
  員会の設置を承認
 ・構成員(◎印は委員長,○印は副委員長)
   附属図書館長            三本木 孝
   北分館長              杉山 滋郎
   文学部          教 授  栗生澤猛夫 HTML文書作成環境
  ◎経済学部         教 授  石坂 昭雄
   スラブ研究センター    教 授  原  暉之
   理学部          教 授  増田 道夫
   工学部          教 授  田頭 博昭
   大学院地球環境科学研究科 教 授  西  則雄
   薬学部          助教授  横井  毅
  ○農学部          教 授  寺尾日出男
   免疫科学研究所      教 授  上出 利光
   大型計算機センター    教 授  山本  強
   情報処理教育センター   助教授  岡部 成玄
 
平成7年7月10日  第1回附属図書館将来構想検討小委員会
 ・委員長に石坂昭雄氏(経済学部教授),副委員長に寺尾日出男氏(農学
  部教授)を選出
 ・検討の進め方を了承
 
平成7年8月3日
 ・理系部局図書館委員の意見交換
 
平成7年8月8日
 ・文系部局図書館委員の意見交換
 
平成7年9月28日  第2回附属図書館将来構想検討小委員会
 ・「附属図書館将来構想に関する基本的合意事項」を了承
 
平成7年10月24日 第3回附属図書館将来構想検討小委員会
 ・「新中央図書館の機能・施設の概要」を了承
 
平成7年10月24日 第161回図書館委員会
 ・「附属図書館将来構想に関する基本的合意事項」及び「新中央図書館の
  機能・施設の概要」を承認
 ・附属図書館将来構想検討小委員会の解散を承認

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