附属図書館新営構想に関する報告書

〜21世紀をひらく大学図書館をめざして〜




平成10(1998)年3月



北海道大学附属図書館






           

附属図書館の新営構想に寄せて

本学図書館委員会のもとに、図書館新営構想を検討するための小委員会が設置さ れたのは、平成9(1997)年1月17日開催の第166回図書館委員会においてで あった。3月6日に行われた小委員会の初会合の席上、吉田宏館長(当時)は「附 属図書館新営に関する検討事項(私案)」を提起し、北海道大学における図書館シ ステムの在り方に関わる問題点として、つぎの4項目を挙げている。  1.研究を活性化するために最も適した研究図書館機能をどう実現するか。  2.学習図書館機能の配置をどうするか。  3.保存図書館機能をどうするか。  4.電子図書館機能を全学的システムとしてどう構築するか。  小委員会は、設置以来ほぼ1年間に合計10回の会議を重ね、本学附属図書館の 現状と新営の基本構想をめぐって論議を深めてきたが、小委員会における検討の出 発点をなしていたのは、吉田前館長の提起した上記4項目の検討事項であった。  検討の過程で、地域センター図書館機能、総合図書館機能のように、新たな検討 課題が追加されるとともに、出発点の枠組みそのものに修正が加えられた部分もあ った。とりわけ、10月29日開催の第170回図書館委員会で、本館と北分館の 一館統合構想の見直し、北分館の存続と機能充実が決定されたのは、既定方針に対 する大きな修正を意味した。  附属図書館新営検討小委員会による慎重な検討を経て起草・作成され、平成10 (1998)年3月17日開催の第171回図書館委員会で審議・了承されたのが、本 報告書である。附属図書館は、今後の新営構想について学内でさらに論議を深め、 あわせて学外からもご理解を得るため、これを十分に役立たせて行きたいと思う。  もとより今日の大規模大学において、図書館の新営に莫大な経費がかかること、 またその準備のために多大の努力と時間を要することは承知しているつもりである。 一方、新営が実現するまで現在の本館と北分館の施設設備について、その利用環境 の改善を棚上げすることはできない。その意味では、現有の施設設備の整備・充実 のためにも、本報告書で指摘されている様々なアイデアは大いに役立つと確信して いる。  この場をお借りして、小委員会を立ち上げてくださった吉田宏前館長、小委員会 の委員長としてご尽力いただいた竹田正直教授をはじめ、本報告書の起草・作成に 英知を結集された委員の諸先生方に心から謝意を申し上げる次第である。  平成10(1998)年3月        北海道大学附属図書館長                             原   暉 之

目     次

機”軋或渊餞曚慮従と課題及び新しい理念

 (1)附属図書館の現状

 (2)21世紀の大学図書館としてあるべき理念

 (3)新営図書館の備えるべき諸機能の基本方針


供/訓追軋或渊餞曚旅汁曚判機能

 (1)学習図書館機能
  1)全学共通教育とキャンパスマスタープラン
  2)学習形態の変化への適応
  3)学習図書館機能の今後の方向

 (2)研究図書館機能
  1)伝統的な研究図書館機能と新しい傾向
  2)研究図書館機能の今後の方向

 (3)地域センタ−図書館機能
  1)地域センタ−図書館としての役割
  2)生涯学習社会における図書館の役割

 (4)保存図書館機能
  1)保存図書館機能の強化
  2)共同保存図書館への展望

 (5)電子図書館機能
  1)電子図書館機能の役割
  2)電子図書館として要求される機能

 (6)総合図書館機能
  1)総合図書館機能としての役割
  2)その他の諸機能



機”軋或渊餞曚慮従と課題及び新しい理念


(1) 附属図書館の現状


 附属図書館本館の建物は、昭和33(1958)年8月に新営工事に着工、以後数回
の増設工事が行われ、昭和41(1966)年4月に全面開館した。4階(一部5階)
建て、延べ12,688屬里海侶物は、約100万冊収容の積層式書庫をもち、当時
国内で最大規模の大学図書館と称された。その後の大きな整備としては、昭和
60(1985)年に書庫、閲覧室等の増築 (4,462)を行っている。このときの増設
で、書庫の収容能力は約140万冊となった。現在、本館の総面積は17,342屬
ある。
 附属図書館北分館は、平成7(1995)年3月まで教養分館と称した。北分館の建
物は、昭和44(1969)年11月に新営工事が竣工し(3階建て,2,404)翌月開館
した。その後、昭和52(1977)年に増設(4階建て、2,292屐砲行われ、現在の
規模は総面積4,696屐⊆容能力約27万冊である。
 定員内職員数は部局図書室を除いて、本館36名、北分館9名、計45名であ
る。
 特色あるコレクションとしては、北方資料、内村鑑三文庫など10文庫、13
点の外国大型コレクション、スラブ関係図書などを含んでいる。
 本館は、第1期工事竣工後32年たち、新しい理念を実現するうえで構造上の
不備や古さがあり、増築工事の直後は収納スペースに若干の余裕があったが、今
日すでに狭隘化している。また、第1期工事部分と増築部分の階層差のために、
1つの階を除いた各階で段差が生じ、作業や閲覧に大変な不便をきたしている。
 また、国際化や情報化への不適応、地域・社会貢献への不十分さをもたらして
いる。これ以上の増築は、敷地や環境問題の点で困難である。この小委員会が検
討を開始する前に、北海道大学施設計画委員会キャンパスマスタープラン委員会
から提出された報告書「北海道大学キャンパスマスタープラン96」が評議会
(平成9(1997)年2月19日開催)で了承されている。そのなかで「情報関連の諸
施設間の連携を強化し、学術情報の集積機能と発信機能を強化するために、中央
図書館や大型計算機センターなどを総合学術コンプレックスに集中配置する。」
と謳われている。新営図書館の敷地に関して、全学的な観点から初めてプランニ
ングされた状況を踏まえて、附属図書館の新しい理念を、防災対策なども配慮し
つつ実現するために、新な場所に附属図書館を新築することが必要である。

(2)21世紀の大学図書館としてあるべき理念

 21世紀は、国際化、情報化、文化の多様化が一層、進展する時代であり、自
然環境と人類の共生の時代、高齢化と生涯学習の時代ともいわれている。これか
らの時代を特徴づけるこれらの重要な諸課題の学術研究・教育の分野における現
実的かつ先端的発展のために、附属図書館は、大学と地域社会において基底的役
割を担っている。とくに、衛星通信の活用にみられる情報通信技術の急速な発展
やインターネットなどによる情報ネットワ−クシステムの急速かつ大規模な国際
的進展は、学術情報の的確・迅速な収集、保存、創造、発信に関わる附属図書館
の研究・教育支援の役割の増大と電子図書館機能を中心とした諸機能の飛躍的革
新を求めている。
 情報ニーズの増大と多様化による電子資料の増大、資料保存機能と情報検索機
能の向上、資料の有効利用、情報発信・創造活動の支援などを学内関連諸部局・
施設と協力して、その実現を図っていかねばならない。
 また、情報資料の多様化と個別化は、他方で、附属図書館の学内における総合
調整機能の重要性をいっそう増大させている。
 さらに、わが国地域社会の高齢化、知的社会化にともなう生涯学習の広がりは、
附属図書館が担っている地域センター的機能の重要性をいっそう高め、個々の道
民、市民の利用の増大のみならず、北海道内の国公立大学、私立大学附属図書館
との有機的連携を必要とするであろう。
 以上、21世紀の附属図書館の新しい理念には、次のような内容が含まれるで
あろう。
  1)学習、研究等への快適空間と先端機器を有する学術情報図書館
  2)生涯学習時代の社会へ貢献する地域センター的図書館
  3)国際化、情報化、電子化時代の先端をゆく図書館
  4)多文化時代、異文化交流時代にふさわしい図書館
  5)急速な技術とシステムの革新、環境変化に対応しうる図書館
  6)情報の多様化、個別化に対応し、かつ総合調整機能の高い図書館
  7)人に優しく、落ちついたインテリア、うるおいとゆとりのある図書館
  8)緑豊かな自然環境と調和した図書館

(3)新営図書館の備えるべき諸機能の基本方針

 新営図書館を構想するにあたって、図書館機能を次のとおりとする。     
大学図書館は情報交換の具体的施設として大学機能の中心的役割を担っている。
図書館機能には、第1にユーザーへのサービス支援機能として1)〜3)があり、
第2に内的支援機能として4)〜6)の機能がある。
  1)教育・学習に対応する学習図書館機能
  2)研究に対応する研究図書館機能
  3)地域センターとしての図書館機能
  4)保存図書館機能 
  5)電子図書館機能 
  6)総合図書館機能
 北海道大学の図書館活動は現在、附属図書館本館及び北分館並びに部局図書室
において行われており、各自の役割と任務をもって、機能している。これらの図
書館、図書室はほとんどが今日の情報化時代にあって、機能的、空間的に不十分
な状況であり、様々な対応を迫られている。
 北海道大学は全国でも有数の広大なキャンパスからなり、将来計画でも更に建
物配置を拡散しようとしている。新営図書館を構想するにあたって、機能的にす
べての図書館(図書室を含む)を集中する1館構想には無理がある。中央図書館
を構想する場合、北分館や部局図書室等を含めた全体を視野に入れたうえで、機
能的調和を図りながら計画する必要がある。また、全学の学術情報体制との整合
性も必要であり、全学の合意に基づき、情報処理教育センターや大型計算機セン
ター等との間においてもゆるやかな連携・調整を考慮する必要がある。

供/訓追軋或渊餞曚旅汁曚判機能

(1)学習図書館機能

  1)全学共通教育とキャンパスマスタープラン 
        学習図書館が図書館の対外サービス機能を占める空間は大きい。大学図
   書館は学習者の生活空間である大学の具体的コアである。
    中央図書館を学習図書館の中心と考えると、北海道大学のキャンパスの
      なかで、総合大学として、多様な全学共通教育、一般教育を支える文系、
      理系学部が中心にあり、そこに近接して一般教育ゾーンが位置し、この中
      心に図書館が位置するのが理想と思われる。新しいキャンパスマスタープ
   ランでは、中央図書館は文系学部に隣接し、理学部に近い位置と決定され
   ている。この位置は一般教育ゾーンと離れているので、一般教育ゾーンに
   ある現在の北分館の学習機能は存続しなければならない。一般教育は、今
   後も現在の一般教育ゾーンを中心に展開されるであろう。一般教育では選
   択科目も多く、不定期な空き時間も多く、一般教育は学部カリキュラムの
   30%ほどを占め、ここには全学部の学生が集まる。この中心に学習図書
   館が必要なことは自明である。中央図書館の学習図書館機能は現北分館と
   のバランスで考えなければならない。
  2)学習形態の変化への適応
    新しい学習図書館機能を考えるとき、本学における学生の学習形態の変
   化を考慮して計画する必要がある。学生の学習の場は、自宅から大学図書
   館へ移り、また、学習形態は、個人学習からグループ学習へと変化してい
   る。また、必要なメディアとしては、書籍のみならず、映像教材、CD-ROM
   などの電子書籍などが加わっている。図書館には、従来型の閲覧室のほか
   に、多くのグループ学習室が必要であり、個人コーナーも必要となる。さ
   らに、コンピューターを通じてのマルチメディアで学習できる環境、映像
   媒体を利用して学習できる環境も必要である。また、大学の大衆化と関連
   して、学習よりも他の関心に熱中する学生もあり、これらの学生を利用者
   として引きつける学習環境の構築という配慮も必要である。
  3)学習図書館機能の今後の方向
    学生の学習・教養の施設としての役割を果たすために、それに相応しい
   施設・設備等及び 銑┐離機璽咼垢龍化・充実が必要である。
    ヽ慇戸竸渊颪僚室
      学部学生等の全カリキュラムに沿った図書を収集する。
    教養図書の充実
      全学教育の充実・支援の場として教養図書を備える。
    参考図書の充実
      学生の学習・調査を支援するために参考図書を充実する。
    ぃ腺峪駑租の充実
      マルチメディア教材の学習効果をあげるためにAV資料・機器を整
     備する。
    ゥ譽侫.譽鵐好機璽咼垢僚室
      図書館資料の利用指導などレファレンスサービスを効率的に提供す
     る。
    ξ嘘慇古へのサービス
      国際化への対応として留学生等の利用へ配慮する。
    Д札襯侫機璽咼垢瞭各
      図書館の管理下で利用者によるセルフサービスを導入する。例えば、
     自動貸出返却装置などの設置。
    ┫枡眈霾鶸超の整備
      学内外の情報収集を行う学生等への支援のために総合情報ターミナ
     ル、情報コンセント等の情報環境整備が必要である。

(2)研究図書館機能

  1)伝統的な研究図書館機能と新しい傾向
     伝統的な研究図書館機能のイメージは、特に電子媒体の普及を要因と
    して、現在、大きく変化しようとしている。
    ー集すべき図書資料の変化
      図書館が収集すべき資料として、印刷資料だけでなく、各種の電子
     情報が大きな位置を占めるようになっている。
    検索手段の変化
      以前のカード式等の検索手法は、電子情報に置き換えられつつある。
    収集資料の利用提供形態の変化
      収集資料の利用提供には、館内利用と館外貸出(研究室利用)の二
     つの形態がある。収集資料が印刷媒体である場合には、その利用の提
     供形態は従来と大きな変化はないが、利用状況の管理について、電子 
     媒体が導入されることになる。この場合には、研究室利用について、
     利用者が自分の利用状況を確認しうるシステムになっていないと、研
     究の効率低下を招くことがある。収集資料が電子媒体である場合には、
     その提供については、新しい形態があり得る。他方、特に文系の場合
     には、文献、資料の山に分け入り、それと格闘する中で研究の進展を
     図るという、まさに伝統的スタイルの研究も意義を失うことはない。
     このような研究スタイルに対する図書館の支援の強化も、これからの
     図書館の重要な課題である。
  2)研究図書館機能の今後の方向
    〇駑舛梁人猷修卜碓佞靴弔帖一定の方針に基づいた資料収集を強化す
     る。資料の収集に際しては、利用者の多様なニ−ズに留意し保障しつ
     つも、本学の特色ある図書資源の形成に努める。また、それらの特色
     ある図書資源の電子化を推進し、情報ネットワークを介して全国に提
     供する。
    ∧幻ジ〆機能の電子化を推進し、研究室からのアクセスを可能にする
     リサーチサポート機能を強化し、十分な範囲のデータベースに部局や
     研究室からアクセス出来る機能を充実する。必要な外国語の能力を持
     つ司書のいっそうの配置が不可欠である。
    8〆した文献について、文献提供機能を強化する。そのハードコピー、
     テキストファイル、画像ファイルなど、情報形態に応じて研究室まで
     配送する。ブックデリバリ、コピーデリバリは現在の学内便を活用す
     る。
    せ駑善寨機能の保全と充実を図る。配送できない古書、貴重書などの
     一次研究資料については、当該保存場所での十分な閲覧を保証する施
     設・設備を設置する。
        ゼ書検索機能を強化する。各種マルチメディア、百科事典、専門分野
     の事典、ハンドブックなどのサーバ機能を持ち、研究者が新しい知識
     や概念を習得する便宜を提供する。
    κ現馭柯杁’修魘化する。各種文書を電子化して、研究者に配布・収
     集し、学内外との適切な交換・作成を支援する。
    ЦΦ羯駑舛瞭手を支援する。ジャーナル、単行本、貴重書のオークシ
     ョン、復刻版、その他のメディアへの転換などの世界的情報の提供や
     入手の便宜を図る。
    ┯Φ羸果発信機能を重視する。大学図書館は外部から情報を収集する
     ばかりではなく、将来は大学の研究成果を外部からのアクセスに耐え
     得る各種のメディアに加工して研究資料・啓蒙資料情報を提供できな
     ければならない。
    専門図書館機能を保全する。専門分野の新着雑誌のペ−ジを繰って読
     む空間、自分の体を動かして過去の文献を探し出す空間を提供する。
    情報媒体の違いを越えて研究資料を提供する能力を確保する。一次研
     究資料の形態や媒体は専門分野によって多種多様に異なり、その一次
     媒体も時代によって異なる。これらの全てを一つの方式に統合するこ
     とは不可能である。しかし、情報記録技術が進歩・変遷しても収集・保
     存してある情報媒体の記録内容を提供できるためには、異なる記録媒
     体を相互に行き来できる方法を常に研究開発する必要がある。図書館
     ・情報学研究開発室の設置が一つの考えられる方策である。
          又、研究の新たな在り方にふさわしい快適な利用環境を提供する。
     例えば、自動入退館システムの設置による24時間利用や従来の書庫
     の準開架、キャレルの閲覧席に、LANやデジタル回線などの情報コン
     セント及び電源コンセントの設置による学内外のネットワ−クとの接
     続の可能性等を提供する。

(3)地域センター図書館機能

   1)地域センター図書館としての役割
     本学は、北海道地区で唯一の国立総合大学であり、全国レベルでの役
    割はもとより地域における基幹総合大学としての重要な使命を担ってい
    る。図書館業務においても本学は約318万冊(平成9(1997)年3月現在)
    を超える蔵書を有し、附属図書館は北海道地区の他の国立大学6校をは
    じめ、公私立大学やその他の高等教育機関の図書館との協力、支援の面
    で主導的な役割を果たしている。今後の国内外の高等教育機関(附属図
    書館)との相互の連携、協力・支援の構築、強化において、従来どおり
    北海道地区での主導的役割が期待されている。
     本学附属図書館が地域で果たすべき任務には、そうした高等教育機関
    (附属図書館)との関係以外に、札幌圏を中心とした北海道地区全体に対
    する情報の提供という「地域センター図書館」としての機能がある。こ
    れは本学が札幌農学校以来、北海道という地域社会と密接な関係を保ち
    ながら発展し、地域に人材を輩出してきた大学として地域に対して果た
    すべき責務であり、本学が今後とも地域社会と一体となって共存共栄し、
    生涯学習の一つの拠点として発展していくために必要不可欠な任務でも
    ある。
   2)生涯学習社会における図書館の役割
     地域社会への情報提供は本来、地方自治体が運営する公共図書館の果
    たすべき役割であり、国立大学図書館がこれと設置目的を異にしている
    ことは言うまでもない。しかし、生涯学習社会への貢献、あるいは地域
    や産業への協力という観点から、国立大学が「開かれた大学」として高
    度で専門的な情報を納税者・地域社会に提供していくことは、今や社会
    の普遍的要請ともなっている。今後、本学附属図書館が開放された地域
    社会のセンター図書館としての役割を十全に果たしていくためには、本
    学附属図書館と北海道・札幌市などの公的図書館の果たす役割分担を明
    確にし、公共図書館や地方自治体等との連携のもとで従来からの閲覧・
    貸し出し・文献複写サービス、電子媒体による情報提供の他、地域社会
    の「知の拠点」としての情報発信の機能を充実・展開させることが必要
    であろう。また本学附属図書館に、札幌市民等が本学図書館を利用する
    ための市民図書利用センターを設置し、住民と大学構成員の対話による
    交流をより広めていく「交流ゾーン」の設置も重要であろう。基幹総合
    大学が果たすべき役割の一つとして、公立・私立を含めた道内を主とし
    た大学図書館同士の教職員の研修・業務提携などの交流をより一層広め
    ていくことも大切である。各大学図書館の長所や創意工夫箇所、図書館
    が抱える問題点とそれらの解決法など、直接会合するのみでなく、各大
    学共通のサーバーを構築し、交流をとおして互いに理解を深め、情報交
    換を積極的に推し進めていくことも極めて重要である。
     本学附属図書館の学外者の利用は、平成8(1996)年度には長期利用
    者893人、短期利用者1,476人を数え、平成元(1989)年度に比べて長期利
    用者の数は約2倍、短期利用者は約4倍に達し、年々増加している。し
    かしながらそのサービス提供は予算・運営上正規の職務としては規定さ
    れてはおらず、職員の努力によって対応しているのが現状である。将来.、
    新営附属図書館が地域センター図書館として予算・人員・設備等の面で
    の積極的な措置を講じることが必要不可欠である。

(4)保存図書館機能

  1)保存図書館機能の強化
    本学の蔵書は平成9(1997)年3月末現在、合計318万冊を数え、年々
   約7万冊ずつ増加し続けている。蔵書の増加と書庫の狭隘の問題は他の国
   立大学でも共通であり、本学もその例外ではない。附属図書館でも事務室
   や閲覧室のスペースを削って書架を置き、資料の保存と管理にあたってい
   るが、書庫管理業務の大部分が図書配架の引き延ばしと移動作業に費やさ
   れているのが現状であり、こうした弥縫策もまた限界に近づきつつある。
   それ故、新営図書館建設による保存図書館機能の強化は切実かつ必須の要
   請となってきている。
    資料の収集・整理・保存は伝統的な大学図書館機能の枢要な部分であり、
   将来、電子図書館機能が進展しても、当分の間は従来の図書館資料の保存
   と管理が図書館業務の主要な任務であり続けることは言うまでもない。
    また、その保存の対象も図書や学術雑誌ばかりではなく、学位論文、歴
   史的文書、地図、映像資料、音声資料、マイクロフィルム、データベース
   等幅広い種類のものが含まれる。出版物の数の増大と価格の高騰は各図書
   館が抱える今日的な問題であり、効率的で経済的な資料保存体制のために
   は、現在の業務の阻害要因となっている不要の資料や重複資料の廃棄もま
   た同時に必要不可欠な措置である。大学における研究資料は全学共有の学
   術的財産であり、現在パンク寸前にある全学の資料保存の問題を新営図書
   館が解決し、全学的な統一のもとに効率的で主導的な保存図書館機能を果
   たすことは重要な責務である。さらに新営図書館は函館キャンパス(水産
   学部)を含む各部局図書室に対してイニシアティヴを発揮して全学的、長
   期的な保存図書館機能を確立し、将来的には地域や全国レベルでの役割分
   担を視野に入れた業務展開をすることも期待されている。効率的利用は最
   重要課題であり、収納効率を高めるために大規模集密書架を導入し、コン
   ピュータ制御による全自動化された「ハイテク書庫」を実現することが省
   力化あるいは無人化の実現の観点からも必要である。さらに酸性紙を利用
   した資料の劣化・崩壊の問題の解決も考慮すべき問題である。劣化資料の
   適切な保存のためには、資料のマイクロフィルム化、電子化など他の媒体
   への変換が求められる。また、現在北方資料室に収蔵されている北方関係
   諸資料あるいは「ベルンシュタイン文庫」等貴重資料については、資料的
   価値の高さから恒温・恒湿かつ防火対策が十分な貴重資料専用の書庫を設
   置し、収蔵することが是非とも必要である。
  2)共同保存図書館への展望
    新営図書館が保存書庫と雑誌のバックナンバーセンターとしての機能を
   備え、全学に分散している稀用図書、一定年数が経過した雑誌の一括保存
   と、集約保存を行うようになっても、その空間は有限であり、遅かれ早か
   れ今日と同様の問題が生起することは容易に想像できる。まずは、前述の
   新営図書館機能を充実させ、その経験を生かし、共同利用図書館への展望
   も考慮しておくべきであろう。閲覧室の運用も必要なことから、地元自治
   体への業務委託による管理運用をはじめ、学生の共同利用研修施設、地元
   市民の研修施設の併設をも視野に入れ、「市民大学」の開講など地域との
   協力も進めなくてはなるまい。

(5)電子図書館機能

  1)電子図書館機能の役割
    電子図書館は電子的情報資料を収集・作成・整理・保存し、ネットワー
   クを介し提供するとともに、外部情報へのアクセスを可能とする機能を持
   つ図書館と定義される。電子情報処理技術は近年著しい発展増大をとげつ
   つあり、10年前の技術が現在では陳腐化している現状をみると、電子図書
   館に関わる電子情報技術のごく近い将来像ですら、予測することは甚だ困
   難である。図書館新営に際しては、現在実用化されている技術をベースに
   して考えて行くが、一旦電子的情報資料として蓄積された中身は、現在の
   システムが将来陳腐化しても、新たなメディア技術に移植して、互換性を
   保つことが原則なので、基本的な電子図書館機能は永続性を有するものと
   考えて差し支えない。電子図書館は歴史的に図書館が果たしてきた、活字
   を媒体とした冊子体による情報提供を電子化するとともに、動画・静止画
   の映像や音声を提供して、マルチメディアによる多面的な情報発信基地と
   して機能する。大型計算機センターとの機能分担については別途協議する
   必要があるが、基本的には大型計算機センターは個人的、生のデータを扱
   うのに対し、電子図書館は北海道大学として発信し、「完成品となった情
   報(編集された情報)」を取り扱う場であると考えられる。言うまでもな
   く電子図書館は独立したのもではなく、本学附属図書館が有する学習図書
   館機能、研究図書館機能、地域センター図書館機能、保存図書館機能など
   を支える設備であり、機能である。具体的機能と施設・設備について以下
   に述べる。
  2)電子図書館として要求される機能
     ‥纏匯駑舛亮集
       冊子体、CD-ROM、ビデオテープ、その他の記憶媒体、ネットワー
      ク経由の情報などの、様々な形態と方法で集積した学術情報を電子
      (デジタル)資料化しHINESなどの学内LANを介して利用者に提供す
      る。既に他でデジタル化されて配布される資料は従来の印刷媒体資
      料の収集に準じればよいが、デジタル化されていない資料に関して
      は、これを独自にデジタル化すべきか否かの本学としての判断基準
      を設ける必要がある。
     ⊃彗な電子資料作成
       本学独自にデジタル資料化して利用者に提供する場合には、その
      提供に時間を要しては意味がない。高度なデジタル化設備とデジタ
      ル化技術を自ら備える必要がある。本学にしかないような稀覯本は
      電子資料化することにより、多くの研究者や学生が容易に閲覧する
      ことができるようになる。
     情報検索機能の高度化
       電子図書館機能のうち蔵書情報検索はすでに現実化されている。
      従来はカードに拠っていた蔵書検索システムは、電子化によって飛
      躍的に利用価値が高くなった。実用化されている蔵書検索システム
      は、内外の広範な書誌的資料を居ながらにして検索できるが、これ
      を更に発展させて論文全文を検索できるようになると、項目イ離
      ンライン図書館が実現することになる。また関連する複数のデータ
      ベースを串刺しにして、横断的検索が可能になるとより効率的な情
      報システムとなる。
     ぅ▲蕁璽筏’
       従来図書館利用の形態は利用者がサービスを求めたことについて、
      図書館側が応じるというのが一般的であった。職員が利用者に直接
      対応するには、人的、時間的制約が伴うことはやむを得ないことで
      あった。電子図書館では職員を介さないで図書館側からの積極的な
      サービスを展開することが可能である。例えば雑誌、図書、その他
      の媒体に予め利用者が登録している分野の論文が掲載されると、利
      用者に自動的に通知して検索を促すようなアラート機能などは直ち
      に実現可能なサービスである。
     ゥンライン図書館
       わざわざ図書館建物まで利用者が足を運ばなくても、電子資料を
      HINESなどの学内LANを介して、複数の利用者が同じ資料を同時に年
      中無休で、時間や他人に煩わされずに研究室から検索ができるシス
      テムの構築が必要である。北大キャンパスは広大で、新営図書館が
      学内のどこに建築されても、アクセスの悪い部局が生ずるであろう。
      また冬期間図書館に出向くことは容易ではない。本学のような立地
      条件の大学こそがオンライン図書館を最も必要としている。また札
      幌キャンパス外の研究施設の研究者にとっては、研究環境の著しい
      改善となる。
     情報発信機能
       本学が有する学内情報(保管してある貴重図書や書画書類、研究
      成果、紀要、学位論文、その他雑多なパンフレット類まで)を広く
      世界に向けて電子資料化して発信する。
     電子図書館機器にアクセスするための機能
       図書館を研究・教育・学習の場所として利用する人に対して、電
      子図書館が保有する様々な機器にアクセスして、電子メールを発信
      したり、電子的資料を作成できる機能もまた必要である。
     電子図書館の構築・運用を支援する機能
       マルチメディア・データ等の作成、図書館業務を支援する機能、
      研修機能の他、電子図書館のあらゆる機能に対して利用者からのア
      クセス頻度を統計化し、電子図書館をより改善して行くための基礎
      データを集積する統計機能。

(6)総合図書館機能

  1)総合図書館機能としての役割
        ”軋或渊餞曚蓮⊂綵劼靴申機能相互間の調整や自らの適切な管理運
      営を行う。
     ∩躪臑膤悗良軋或渊餞曚箸靴董各部局図書室、あるいは、学内諸部
      局、諸施設、センター等との前述の諸機能等に関する総合的調整を
      行う。
     F仔睛0譴旅駑総合大学として大学間の地域センター機能を発揮す
      る上での総合調整機能とともに地域住民・市民への直接・間接のサ
      ービスにおける調整機能も求められている。
  2)その他の諸機能
    ゝ拌、リラクゼーション、癒しの機能
      長時間の読書やコンピューター検索、読み取り、入力、縮刷版の小
     さな文字に疲れた眼や、頭脳と身体の疲労を癒すための空間と設備、
     インテリアを備えるべきである。ゆったりした椅子で身体をやすめな
     がら、魚や小鳥のいる美しい庭や樹木を眺め、時には、遠くの手稲山
     や、藻岩山を見ながらまどろむことができる場所が必要である。館内
     のほとんどを禁煙とすべきであり、そのためにも、禁煙と喫煙の夫々
     のいくつかの談話室、休憩室が必要である。個別あるいは複数で音楽
     を聴ける装置も備えたい。軽食堂も必要である。
    ∧顕宗情報発信機能
      すでに、本学の特色あるコレクションの展示、資料の公開などの経
     験を有しているが、さらに、文化・情報の創造や発信機能を充実させ
     るために講演会や文化・芸術公演が可能なホールを備えることも検討
     してみる価値がある。広めの廊下を活用した絵画や写真のギャラリー
     もあって良い。
    マルチメディア機能
      ビデオ、CD,パソコンなど、可能なかぎりの電子媒体を備えた機
     能別の空間を用意する。インターネットや衛星放送の利用で国際的な
     情報資料に接続できる条件を整えるとともに、利用にあたっての著作
     権問題やインターネットの悪用について十分注意すべきである。
    じ修機能
      規模やレベル、所属や部署、専門に応じた研修を行えるような施設、
     設備をそなえておき、学内外に開放する。            
     さらに、研修内容および方法にかんする向上、国際的経験の蓄積につ
     いての情報資料を学べるようにしておきたい。研修施設やシアター機
     能をもつ講堂も必要である。
    ッ楼茵社会貢献及び次世代機能
      情報図書館の電子媒体、技術、システムの変化・発展は、急速であ
     り、今日の時点で予測できないことがあり、何らかの研究開発、点検
     などのシステムを考慮しておくことが必要である。その成果は、つね
     に地域・社会や他の図書館に還元する。また、次世代の高校生たちに、
     大学の研究や教育、学生生活について知らせる高校生への情報提供コ
     ーナーをつくり、若者の理科離れの克服、本学への関心の増大とより
     正確な理解の一助としたい。
    Ε哀蹇璽丱覽’
      益々、国際化する時代をむかえることから、世界のあらゆる国々の
     多文化、異文化交流等の情報資料を収集し、特別室を作っておくこと
     が望ましい。そこには、本学の特色の1つでもある北方圏の国々の資
     料や本学の姉妹校の資料、留学生や留学を希望する学生にとって必要
     な情報資料を備えておくべきである。ギャラリー、シアターの活用も
     考えられる。
    Д轡鵐椒襯織錙宍’
      全学的な研究・教育支援の点から、予定される場所に時計台等のシ
     ンボルタワー的なものがあれば便利である。それによって本学の訪問
     者の多くが附属図書館を訪れてくれる可能性が高まり、自然なかたち
     で附属図書館の活動を広める役割を果たしてくれる。
    ┗卆営命関連機能
      大学改革の進展、とくに、授業改革の進展にともない、また、遠隔
     地との学術交流の発展によって、スペース・コラボレーション・シス
     テムが普及する。また、社会の情報化、高齢化に伴い、今後ますます、
     高等教育機関における生涯学習への要求が高まり、放送大学への受講
     希望が増大する。学内の情報関連施設との密接な連携とともに、これ
     らの機関、制度の活用をも考慮すべきである。           

掘〇温融駑繊蔑)


                          あ と が き

 平成9(1997)年1月17日に行われた第166回図書館委員会において、「北
海道大学附属図書館新営検討小委員会」が、設置された。委員は、館長、分館長
と文系3名、理工系3名、医歯薬系3名、の計11名であった。
 第1回小委員会は、平成9(1997)年3月6日に行われ、当時の吉田宏館長から、
1)検討のすすめかたとして、平成7(1995)年10月24日の第161回図書館
委員会(三本木孝館長、石坂昭雄小委員長)の基本合意事項を基礎に(変更はあ
りうるとしても)検討すること、および、「北海道大学キャンパス・マスタープ
ラン'96」を考慮することが提起された。また、2)新営図書館の内容として、今
後の図書館のありかたや学術情報システムにおける図書館の役割、新営図書館が
担うべき諸機能についての検討が提起された。
 平成9(1997)年4月1日に、原暉之館長が就任し、その後、北分館の存続を確
認したことを除いては、基本的に第1回小委員会における館長の提起を基礎とし
て検討をかさねてきた。なお、第1回小委員会で竹田正直小委員長を、第2回小
委員会で岸本晶孝副委員長を選出した。
 3月6日の第1回小委員会以来、平成10(1998)年1月16日の最終小委員会
まで、10か月間に、実に、10回の小委員会が開催され、委員各位の熱心な討
議によって本報告書をまとめることができた。この間、委員一同の附属図書館の
実地見学による実情把握や、原館長や事務部職員による先端的図書館の視察、委
員相互の個別的な分担部分の打ち合わせ、E-mailを活用しての事前検討など、委
員会での討議以外のさまざまな場での努力が行われた。
 吉田宏前館長、原暉之館長、岸本品孝副委員長をはじめ小委員会委員の諸先生
がたが、多大な貴重な時間をこのために費やしてくださったことにたいし、また、
三上洋由事務部長の時宜を得た適切な助言や小委員会を直接、献身的にサポート
してくださった東海安興情報管理課長ほか事務部の方々に対し、心から深い感謝
の意を表するものである。
 今後、附属図書館関係者はもとより、全学のご理解とご支援を得て新営附属図
書館がより早く実現することを願って止まない。


  平成10(1998)年3月

             北海道大学附属図書館新営検討小委員会委員長
                         竹  田  正  直