カナダの図書館を訪問して

附属図書館情報サービス課資料サービス掛 佐藤依理子
楡蔭 No.89(1994.3)より

 平成5年の10月末から11月初にかけて,本学国際交流基金の事業の一環として,カナダの図書館を見学する機会に恵まれた。「カナダ」と言えば,カナディアン・ロッキーとスモークサーモン,といったくらいのイメージして持っていなかった私が,なんて無謀な,とわがことながら冷汗ものである。幸い,周囲の皆様方,また,旅程についてからは訪問先の皆様方のご好意により,つつがなく旅を追えることができた。訪問先は,
 ・Asian Library,University of British Columbia(バンクーバー)
 ・University of Toronto Library(トロント)
 ・Library of University of Prince Edward Island(シャーロックタウン)
の3館である。
 以下は,その際のちょっとした印象記とでも言うべきものである。

アジア図書館(ブリティッシュ・コロンビア大学)

 University of British Columbiaは,カナダ有数の総合大学である。構内にある人類学博物館は観光名所にもなっている。今回は,同大学にある施設,Asian Center内のAsian Libraryを訪問した。この図書館は,建物自体がユニークな形をしている。一見すると,とても図書館には見えない(大阪万博の時,サンヨー館として使われた建物であるとのこと)。しかしフロアに一歩足を踏入れると図書やカードボックスがぎっしりならんでいる。
 ここは,その名の通り,各種アジア系言語で書かれた資料を収集している図書館であり,その規模としてはカナダ最大のものであるという。私は主として日本語の資料を所蔵してある辺りを見せていただいたが,他にも中国語,韓国語,インド系言語・・・・・・と各種アジア言語の資料が網羅されている。
 この図書館でも機械化は着実にすすんでおり,1992年には目録業務が全面オンライン化されたとのこと。ひとつ,非常に印象的だったのは漢字を機械に入力するための,特殊なキーボードである。キーの上に漢字(の部首)がずらりとならんだボードには,「漢字って,記号の組み合わせなんだ」と改めて気づかされた。 館内には,さすがにアジア系人種(と,私には見受けられた。)の利用者が多い。聞けば,ここは市民にも公開されているそうであるし,階下には茶室等設備があるとのこと。さらに隣接して北大にも縁の深い,新渡戸稲造記念の日本庭園があったりもする。「アジアセンター」の名の通り,ここは一大文化施設として機能しているようであった。

トロント大学図書館

 トロントは言うまでもなくカナダ東部最大の都市であり,文化活動の面からみても中核をなしているように見受けられる。このトロントでも随-の大学であるトロント大学を訪問した。構内は予想以上に大きく,目指す図書館にたどりつくまで何回も人に道を訪ねる始末。やっとたどりついた図書館がこれまた巨大で,その建物の大きさに文字どおり息を飲んだ。ここの図書館は大きく三つのブロックに分かれている。中核をなすのが中央図書館の役割を担っているRoberts Library ,貴重図書館であるThomas Fisher Rare Book Library,そして(ここに私は感動したのだが),上記の二つの図書館に隣接してLibrary Scienceの学部の建物が設置されているのだ!
 とにかくこの図書館ではその規模に圧倒され通しであった。今回訪問した中央図書館だげでも蔵書は250万冊余,全学ではなんと700万冊(!)にものぼるという。もちろんそれのみならず,ずらりとならんだ書架や目録のカードボックス,貸し出しカウンターに列を作る利用者,Student Staffを含めれば400人になるという職員の方々の数の多さ,すすんだ機械化,とりわけその遡及率の高さ等,なにかと刺激的であった。

プリンス・エドワード島大学図書館

 Prince Edward Islandは人口12万余の小さな島であり,なおかつ島それ自体でカナダの州をなしている。ここでは,この島にある唯一の総合大学であるUniversity of Prince Edward Islandの附属図書館を訪問した。
 図書館自体は大学の歴史がまだ浅い(1969年創立)こともあり,小規模といえる。しかしこの図書館では図書館の利用者および職員にとってのアメニティについて学ぶべき点があったと思う。これは今回の訪問先の図書館全部について言えることでもあるが,「図書館」という場所が,たいへん心地よいのである。採光や空調など,施設の点からはもちろんである。さらに,喫煙室や談話室,休憩室等の充実や,付随して売店や食堂がある図書館など,興味が尽きないところである。ところで,北大の図書館は,利用者にとり,どのような場所なのであろうか。願わくば,「心地よい」場所であってくれるとよいのだが。
 以上,今回訪問した各大学図書館の印象を.駆け足で述べて来た。上記のほかにも,おそるおそるといった感じでのぞいた各地の公共図書館,館員の方の対応が実に鮮やかで目を見張ったトロントのBoys & Girls House等,印象に残る場所は多い。なにより,海外で働くたくさんの図書館員の方々にお会いできたことは,最大の収穫である。図書館員としての自覚と誇りを持って働いていらっしゃる姿に,おおいに啓蒙された。簡単ながら,この場を借りてお礼を申し上げたい。
 最後に,今回の渡航にあたり,様々な形でご尽力いただいた北海道大学の方々,とりわけ附属図書館の皆様に心よりお礼を申し上げて,つたない報告の最後としたい。ほんとうにありがとうございました。


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