北大図書館研修記


       函館工業高等専門学校 庶務課図書係 福 村 美保子  私は,平成7年10月から平成8年2月末までの間,高専図書館業務改善 の参考とするため,北海道大学附属図書館に併任いたしました。  10月1日に辞令を受けたのち,所属掛である情報管理課図書受入掛長か ら北大図書館の概要と今後の業務日程を伺いました。10月は情報サービス 課,11月は情報管理課の図書受入掛,12月〜2月は情報システム課で, 各課でそれぞれ予定を組んでくださり,また,この間,いくつかの学部図書 室の見学も入れてくださいました。そして,毎週報告を提出することになり ました。  情報サービス課は,資料サービス掛で3週間,参考調査掛,相互利用掛各 1週間です。さっそくエプロンを付けてカウンターに座ることになり,書庫 内の説明と貸出,返却の端末操作を教わりました。資料サービス掛では当番 表により,カウンター当番と配架当番があります。毎日午前中は閲覧室の返 却図書の配架,午後はカウンターに座りました。カウンターにいると利用者 からは職員の経験の多さはわかりませんから,手が空いている私のところへ も来ます。利用者に不安を与えないようにこやかに応対するものの,経験不 足は補えず,周りの人に聞いたり教えてもらいながら応対しました。一番困 りましたのは学外者への対応で,学外者の区分は15もあり,貸出条件等も それぞれ異なりますから注意が必要です。北大は札幌駅から徒歩5分位と交 通の便がいいので,一般市民の方も気軽に立ち寄られるようです。北大は一 部開架式で書庫出納もあります。6層の積層書庫で利用の多いものはカウン ター出入口から近いところにありますが,300(DDC)代が別扱いにな っていることと一部NDC分類のものがあったりで,書庫の出入口の案内を 確認してから走ります。分類番号はコンマ以下6ケタまでとっているのもあ りますから,正しく配架されていれば探すのは簡単ですが,資料の数が約1 00万冊とのことですから,書架を特定するのに手間取りました。  参考調査掛では,CD‐ROMによる検索,NACSIS‐IRについて 教えていただきましたが,この時点ではOPACの利用方法もおぼつかなか ったので,こわごわキーボードにさわっていました。  相互利用掛は日頃から文献複写でお世話になっているのですが,函館高専 は依頼のみですしまだ複写依頼票で行なっているのでILLについての知識 がなく,今回北大の受付け数の多さに驚き,簡単に依頼と受付けができるこ とは便利ですが,これが複写と現物貸借件数の増大につながっていることを 実感しました。依頼館はたかが1件ですが,受付け館はされど1件で端末に 向かって依頼しても,該当文献を書庫から探して複写したり,包装して郵送 するのは職員ですから大変な仕事量です。高専のように資料の数が少ないと ころはお願いするばかりですが,蔵書の多い図書館ほど受付けが増え,早晩 お手上げになるのではと危惧されます。受付けた文献を一生懸命複写して, 担当者の苦労を知りました。  11月は情報管理課図書受入掛で,まず,発注カードをOPACと発注済 みカードで重複調査して,重複してなければ書店に発注します。納入された 図書の検収,支払い,資料番号を付与すると分類は目録情報掛です。  12月から情報システム課で,学術情報掛と目録情報掛を約1カ月半づつ, 情報処理掛を1日勤務しました。  学術情報掛では日々納入される雑誌の受付けと配架,製本する雑誌のリス トを作成して業者に依頼するまでを行ないました。外国雑誌の場合,FD受 入が多くなってきているので処理は早くなりましたから利用者への提供もス ムーズに行なわれます。「学術雑誌総合目録・和文編」の改訂のための作業 もありました。  目録情報掛では目録作成を行ないましたが,学情センターからの取込で行 なうので,本で勉強した分類法の出番はあまりありません。目録規則,記述 文法,コーディングマニュアルの知識と書誌構造の理解が必要でした。洋書 特に英語圏以外のものについて書誌を同定するのに苦労しました。さらに, 北大はDDC採用なので和書については分類を付けにくいところがあります。  今年度からUNIXによる図書館システムを導入したので見学者が多いう え,日々の業務に追われている情報処理掛なので,どうして24時間利用で きるの? バックアップはとらなくてもだいじょうぶなの?と不思議だった けれど聞けなかったことを教えていただきました。また,UNIXのコマン ド一覧を作っていただいたり,ホームページの作成もさせていただきました。  この他に医学部,理学部,農学部,工学部の各図書室を訪ね,また,数学 科図書室,物理学科図書室,農業経済学科図書室,森林科学科図書室,原子 工学科図書室,材料化学系図書室と各学部の特色ある学科図書室も視察しま した。  このように,普通は数年ごとに一つの掛を経験していく業務を,私は駆け 足で全掛を経験させていただきました。そして,利用者に対する図書館のサ ービスとは,求められた情報を速やかに提供することであると改めて教えら れました。速やかにということは現代の情報社会ではコンピュータ機器,情 報通信網の利用なしでは考えられず,これまでの紙に書かれた書物やカード を対象にしていた時代とは異なった図書館職員が求められています。図書館 職員とは? 図書館司書とは? これからどうあるべきなのかと考えさせら れました。若手の職員で毎週勉強会を開いているということでしたので,一 度聞いてみたかったと思ってます。  5カ月過ぎて,大学の図書館は,情報を求める利用者へ迅速に対応できる 環境を整えておりかつ,さらに高度な情報提供を目指していて,学術研究に 貢献している,そして期待されているということを感じました。高専はと顧 みると,必ずしも期待に沿える現状ではありません。これからは自館の資料 充実はもとよりですが,他高専との協力,学情センターと接続した情報提供 ができる方向にもって行くことからまずは始めなければその先へは進めない と思います。  長いようで短かった日々が終わりました。毎朝お掃除をしながら学内のこ とを教えてくださった方,顔と名前がわかるようにと似顔絵を描いてくださ った方,書庫で図書を探していると「わかりますか?」と声をかけてくださ った方々,机が変わるたびに端末を移動してくださった方々,UNIXがわ かるようにとご心配いただいたり,「どうですか?」といつも声をかけてく ださった課長さんたち,予定を立ててくださった掛長さんたち,そして担当 の業務を教えてくださった皆さんありがとうございました。そして,私の業 務を引受けてくださった函館の皆さん,ありがとうございました。                         (ふくむら みほこ)


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