コレクション 【 その他 】 (2000年度収集分)

正教の対話者(マイクロフィッシュ) | 巡礼者(マイクロフィッシュ)

帝政ロシア県知事報告書(マイクロフィッシュ) | キエフ県報知、カザン県報知(マイクロフィルム)

18世紀ロシア研究 補遺(マイクロフィッシュ) | ウクライナ新聞・雑誌集成(マイクロフィルム)

Yugoslav Statistics, 1834-1919(マイクロフィルム) | スラブ語聖書コレクション(マイクロフィッシュ)


スラブ研究センターニュース「図書室だより」に掲載の解説などを編集したものです。

コレクション名をクリックしますと、資料の書誌情報・所蔵巻号を参照できます。


(1)  正教の対話者(マイクロフィッシュ)

(Православный собеседник) 1855-1917.

カザン神学大学の創立は1842年とされる。他の3つの神学大学に比べて遅れた出発であるが、その前身である主教区初等学校Архиерейская элементальная школаが設立されたのは1723年にさかのぼる。この学校はキエフ神学校を範として1732年に神学校に改組され、1797年にはペテルブルク神学校とともに神学大学に改組されたのだが、資金難などから1818年に閉鎖され、この年にようやく再興されたのだった。カザン神学大学は、研究レベルの高さと、イスラム教徒その他の異教徒への布教活動への関与によって特徴づけられる。その雑誌は、主にボルガ流域やシベリアでの正教会と異教徒との関係、異民族や分離派のあり方を知るための手がかりとして、活用が期待されよう。なお、今回のセットには、付録として刊行された『異民族評論『Инородческое обозренике』.т 1-2 (1912-1917)があわせて収録されている。また、この資料は一橋大学附属図書館にも収蔵されており、センターはおそらく国内2番目の所蔵館である。


(2)  巡礼者(マイクロフィッシュ)

雑誌 『Странник 巡礼者』は、1860年から1916年まで、ペテルブルクで刊行された月刊誌である。1860年前後は、アレクサンドル2世治下の自由な雰囲気において、ジャーナリズムが発展し、さまざまな雑誌が登場し言論がたたかわされた時代であるが、ロシア正教会においても、いくつもの雑誌が創刊された。Странникは、そうした雑誌の一つだが、Igor Smolitschにおいては、60年代においては、教会史的に価値の高い記事を多く掲載したが、その後より大衆的な方向に転換し、読者の幅を広げたと評されている。(История русской церкви,1700-1917. ч.2. М. 1997. с.55)。正教会と公衆との接点にあった雑誌として、今後の活用が期待される。


(3) 帝政ロシア県知事報告書(マイクロフィッシュ)

ロシア国家歴史文書館の所蔵するロシア各県の県知事が皇帝あてに提出した年次報告書は、19世紀ロシアの諸地域の状況を知るための基本資料といわれている。センター図書室は、Norman Ross社がその一部について製作したマイクロフィッシュをこのほど購入することができた。収録範囲は、次の12県の、それぞれ1855-1864年の分である。アルハゲリスク県、エカテリノスラフ県、カザン県、サラトフ県、トボリスク県、ニジェゴロト県、ノヴゴロト県、ペテルブルク県、ペルミ県、ボロネシ県、モスクワ県、ヤロスラヴリ県。いくつかの報告書をリーダーにかけてみたところでは、報告書は書記官が手書きで作成したものと見られる。大きな字で丁寧に書かれているが、タイプ打ちの文書と違って多少の慣れが必要であろう。


(4) キエフ県報知、カザン県報知(マイクロフィルム)

Norman Ross社は、革命前ロシアの県報知(губернские ведомости)のマイクロフィルム版を製作するプロジェクトを、ペテルブルクのロシア国立図書館(Российская национальная библиотека)の協力を得て進めており、現在、7県について入手可能となっている。センター図書室では、このうち、アクモリンスク州(1871-1919年)および沿アムール総督府(1894-1917年)の分を1998年に購入しているが、今回、さらにキエフ県(1838-1917年)およびカザン県(1838-1917年)についても購入することとなった。現在、すでにフィルムは到着しており、受入手続き中である。県報知は、当該地方に伝達される中央政府および地方機関からの法令・布告等を収める公式部分と、それ以外の地域関連情報を報ずる非公式部分から成り、革命前のロシア地方社会の動きを追う上での基本資料として、今後の活用が期待される。


(5) 18世紀ロシア研究 補遺(マイクロフィッシュ)

Eighteenth Century Russian Studies (on microfiche) 1st supplement to the 2nd cumulative catalog

製作: IDC社 全252タイトル マイクロフィッシュ 3,175sheets

北海道大学附属図書館の所蔵する18世紀ロシア研究叢書の続きにあたる。検索は、スラブ研図書室の仮カード目録、およびコレクションを紹介する参考図書室備付け小冊子が利用できる。


(6) ウクライナ新聞・雑誌集成(マイクロフィルム)

[収録タイトルリスト]

主としてウクライナ語の新聞・雑誌全 199タイトル。本コレクションの特徴は西ウクライナ地域、すなわち当時オーストリア領下にあったガリツィアとブコビナおよびハンガリー領下にあったカルパチア・ルーシの地域で刊行されていた新聞・雑誌を集大成した点にある。ウクライナ語出版物に対する厳しい国家統制が敷かれていたロシア帝国内とは異なり、西ウクライナでは自由な言論の下でウクライナ文化が開花し、近代ウクライナ史の展開に決定的な役割を演じた。時代的にも、主として19世紀半ばから第1次世界大戦終結までの興味深い時代をカバーしている。(部分的に両大戦間期も含む) なお、若干のドイツ語のタイトルを含む。


(7) Yugoslav Statistics, 1834-1919(マイクロフィルム)

全 86リール

これは、1990年代はじめまでユーゴスラヴィアを構成していた地域の主要なものについて、大戦前にそれぞれの地域において作成された統計類のコレクションである。セルビア・クロアチア語もしくはドイツ語のものが多い。当時の事情の反映であろうが、地域や分野に精粗が見られるのは致し方あるまい。またオスマン・トルコの治下に作成されたものは含まれていない。しかし、セルビア王国統計年鑑(1893-1910年分)、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ統計年鑑(1906-1916年分)の他、人口、農業、家畜、教育、鉄道、貿易、犯罪などの統計を含み、基本資料としての活用が期待される。収録資料の点数を地域毎に示すと、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ:76点、クロアチア・スラボニア:79点、セルビア:166点、モンテネグロ:1点、である。なお、このセットは、一橋大学経済研究所も所蔵している。


(8) スラブ語聖書コレクション(マイクロフィッシュ)

Slavonic Bibles

製作: IDC社 全40タイトル マイクロフィッシュ 493 sheets

モスクワ大学図書館の所蔵する、15-16世紀刊行のスラブ語訳聖書刊本を収める。
この時代の聖書のスラブ語訳についての網羅的なコレクションとは言えないものの、1491年にクラクフで刊行された、最初のスラブ語印刷本に始まり、1517年からプラハでスラブ語図書の印刷を始めたスコリナの出版物、1550年代のモスクワの匿名出版者による出版物、1560年代のモスクワ時代のイヴァン・フョードロフの出版物と、リヴォフやオストロークでのその後の彼の仕事、1519年にヴェネツィアで刊行された祈祷書など、重要なものばかりが収められている。