ティーメ文庫1:ドイツ法政史・実定法関連コレクション

ティーメ文庫1 : ドイツ法制史・実定法関連コレクション

Sammlungen der Deutschen Rechtsgeschichte Und der Positiven Rechte.

[1979年度 大型コレクション]
本コレクションは、フランクフルト大学等四つの大学を歴任した後、1953年からはフライブルグ大学正教授となり、1975年同大学名誉教授となって今日に至っているハンス・ティーメ氏が永い年月をかけて蒐集したドイツ法制史、法哲学、法思想史、比較法等、基礎法学分野の蔵書の一部である。これらの図書、抜刷等は基礎法学、歴史法学における世界に類をみない貴重な資料である。

形態 オリジナル
数量 3,239冊
言語 複数
購入年度 1979
貸出 可(一部不可)
複写 可(一部不可)

資料一覧A-D
資料一覧E-E
資料一覧F-O
資料一覧P-U
資料一覧V-Z, その他


*資料紹介(『楡蔭』No.53,p.9より)

ドイツ法制史・実定法関連コレクション

 本コレクションはフランクフルト等五つの大学を歴任し,1953年からはフライブルグ大学正教授となり1975年同大学名誉教授となって今日に至っているハンス・ティーメ氏が収集した蔵書の一部である。ティーメ氏は歴任中フライブルグ大学長,国際法制史学会副会長等の要職に在り特に法制史学会で最も権威ある「ザヴィニー財団法制史雑誌・ゲルマン法の部」の編集に従事し,ヨーロッパ法制史学界の中心的存在であり,その専攻分野はドイツ法制史である。

*資料紹介(『楡蔭』No.58,p.1-2)

ティーメ文庫のこと
法学部教授 石川武

昭和54年度にひきつづいて,昭和56年度末,「ティーメ文庫」の一部が北大に入った。これで全体の約3分の2になる。

 この文庫の持主,ハンス・ティーメ教授は,西独フライブルグ大学の名誉教授,ドイツ近代法史を中心とするヨーロッパ法史の泰斗。長年にわたり,斯界で最も権威のある「サヴィニー財団法制史雑誌」の編集に当たられ,欧米法史学界における国際交流の一中心であって,かねてからわが国の学界とも深い絆で結ばれている。

 総数1万点を上廻るこの文庫は,教授の学問的関心の広さを反映して,きわめて広い分野にまたがっているが,その中心は,何と言っても近世法史・ヨーロッパ法史にある。この学問分野は,ようやく第二次大戦後になってから自立した若い分野であり,学生時代からそれを志した教授は,どうしても私財を投じて多数の文献・史料を蒐集しなければならなかったのである。

 新らしい分野の開拓のために蒐集されたということ自体,この文庫の内容的貴重さを示唆しているが,忘れてならないのは,この文庫には,さらに,4,000点を上廻る抜刷が含まれていることである。この抜刷は,教授の国際的地位を反映して,驚くほど広い範囲から献呈されており,その中には,今日入手困難なものが相当数含まれているだけでなく,将来近世法史・ヨーロッパ法史が顧みられるとき,この抜刷全体が貴重な資料を提供してくれるはずである。

 ふつう「文庫」は,持主が亡くなってから手に入る。ところがティーメ教授は,現在75歳,なお学界の第一線にあって活躍されている。最後に,その間の経緯をごく簡単に述べておきたい。

 教授は,最初に来日された昭和46年,一橋大学所蔵の「ギールケ文庫」をごらんになって大いに感銘を受け,数年後,ある親しい日本人に,「あんなに大事にされるのなら,自分の蔵書も,将来,日本で役に立ててほしい」と洩らされた。たった一つの条件は,「自分が勉強できる間は,手許において使いたい」ということであった。

 これは,研究者としてきわめて当然の条件であったが,そのままでは予算の用意のしようがない。そこで教授には,わが国の予算の仕組みを繰り返し御説明し,無理に蔵書を三つに分割して,これまでにその3分の2を譲っていただいたのである。最後の3分の1は,教授がそれを「もはや必要としなくなったとき」お譲りいただけるはすである。

 第1回目の契約のつめの段階で,円が日に日に値を下げ,ハラハラしたことを想い出す。そのほか数限りない困難をのりこえてこの文庫を入手できたのは,多数の関係者の御理解・御協力があったればこそである。とくに佐野文一郎(当時)大学局長,遠山敦子(当時)情報図書館課長,田保橋 彬(現)情報図書館課長,宮部 徹(当時)法学部事務長の名を逸するわけにはいかない。記して篤く御礼申し上げる次第である。