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石原純という名前を初めて見たのは、大学時代に西田幾多郎の哲学を勉強していたときであった。西田の弟子であった下村寅太郎の文章中に、日本に於ける相対性理論の紹介者といった形で名前が出ていたのを覚えている。この本では、物理学者、相対性理論の研究者・紹介者という面だけでなく、科学ジャーナリストとしての石原に光を当てて多くのページを割いている。昨今、自然科学研究の世界では研究の確実性やその情報の透明性を揺るがすような事案がいくつか起こった。(勿論、人文社会科学でも同様のことはあったし、今後もあり得る。) このような時代に、科学研究の内実を的確かつ公正に伝える仕事の意味はますます大きくなっていると言わねばならない。北大には、そういった人材を育てるCoStepというプログラムもある。大学・研究室と市民・国民との間の情報の橋渡しを仕事としたいと考える学生には、この本を通して石原の生涯を知り、その精神を学んでほしいと思い、ここに推薦する。 |