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「多文化社会」や「異文化(間)コミュニケーション」というのは今や大学教育に於ける”流行語”と言ってもいいと思うのだが、他でもないこの北大で「多文化交流科目」を担当していると、学生の殆どが(場合によっては教員も)「多文化」あるいは「異文化」ということを”外国人(非日本人)との交流”だと思い込んでいる実情が見られ、そのたびになんとかしなければ、と思ってしまう。
この本は三部から成るが、第一部の総論を除くと、半分を占める第二部は外国(人)に関する「多文化」状況ではなく、この日本国内に於いて文化的背景を異にする人々に関する考察である。日本(という国)が「一国家・一民族・一言語」の国だというオメデタイ-と敢えて書こう-発想を当たり前にものとしている学生諸君には是非読んでいただきたい。日本は既に「多文化」状況にあることが理解できるであろう。しかし、そこで考えることを止めないで、その「多文化」状況を見えにくくしているものは何か、ということにさらに考えを進めてほしい。そこから、新たな日本社会の可能性が開けると思う。 |