「本は脳を育てる」について
(教員の皆様へ)推薦文受付中です!
atom新着推薦文
本は脳を育てる ~北大教員による新入生への推薦図書~ 

この企画は、主に全学教育担当の先生方が、学生の皆様に読んでほしい本を選んで、 紹介文を執筆くださっているものです。推薦されている本はすべて図書館で借りることができますので、 ぜひ気に入った本を読んでみてください(視聴覚資料は館内のみでの利用となります)。
"HONWA-NOWO-SODATERU":Reading nourishes your brain! - Suggested readings for freshmen
University Professors in charge of liberal education have recommended these books for student, along with their introductory essays. Seize the opportunity and read them-they are here for your education.
     検索語について
教員氏名順INDEX
一覧表示

JUNLE
- 心や思考の仕組みを探る 
  哲学/心理学/宗教/語学/知識…
- 現代社会について考える 
  政治/経済/法律/文化論…
- 歴史に分け入る/世界を知る 
  歴史/地理/考古学…
- 文学・芸術との対話 
  文学/美術/音楽…
- 科学の世界 
  科学史/数学/物理/化学…
- 生命とは何だろう 
  生物学/医学/農学…
- 地球と私たち 
  地学/宇宙…
- 技術の最先端 
  工学/建築/情報…
- 健康と社会 
  スポーツ/健康…
- 映像資料 
  教材/映画…

DPMC
- 文学研究科 (90)
- 教育学研究科 (9)
- 法学研究科 (3)
- 経済学研究科 (7)
- 理学研究科 (38)
- 医学研究科 (6)
- 歯学研究科 ()
- 薬学研究科 ()
- 工学研究科 (6)
- 農学研究科 (7)
- 獣医学研究科 ()
- 国際広報メディア研究科 (22)
- 情報科学研究科 (2)
- 水産科学院・水産科学研究院 (4)
- 環境科学院・地球環境科学研究院 (3)
- 公共政策大学院 (2)
- 言語文化部 (90)
- 低温科学研究所 (2)
- 電子科学研究所 (7)
- 遺伝子病制御研究所 ()
- 触媒化学研究センター ()
- スラブ研究センター ()
- 情報基盤センター (1)
- 留学生センター (85)
- 高等教育機能開発総合センター (1)
- 総合博物館 (3)
- 北方生物圏フィールド科学センター (10)
- 創成科学共同研究機構 ()
page  |  1  | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21

  1. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    数学界に革命をもたらした「不完全性定理」とは何か 
    ゲーデルは何を証明したか-数学から超数学へ- / E.ナーゲル&J.R.ニューマン. - 白揚社 , 1999     北大ではどこにある?
    この本は、1968年に『数学から超数学へ : ゲーデルの証明』というタイトルで出された本の新装版である(原著は1958年!)。「ゲーデルの不完全性定理」というのを聞いたことがある人は、理数系でなければ必ずしも多くはないかもしれないが、「アインシュタインの相対性理論」や「ハイゼンベルクの不確定性原理」にも比するべき、数学に大転換を迫った原理である。この本は、その決して易しくはない「不完全性定理」をできる限りわかりやすく解きほぐして説明しようとするものであり、理数系の学生のみでなく論理学や数学的証明といったことに関心のある文系学生も努力すればなんとか理解できるようなレベルまでは引っ張り上げてくれるものである。この本を、大学院生時代に読んだときの経験から言うと、「リシャール数」という概念が出てくるあたりが文系の学生には最も分かりにくい一つの難所で、ここを粘り強く考えて読み通せばあとはそれなりになんとか最後までたどり着けるというのが、実際に読んで得た感想である。一度で分かろうとする必要はないのでゆっくり考えながら読んでいってもらえればと思う。この本を通して数学基礎論の奥行きと面白さが感じられたらさらに廣瀬健・横田一正『ゲーデルの世界』(海鳴社)なども読んでみることを勧めたい。

    登録日 : 2016-06-27
  2. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    「辞書にはドラマがある」 
    <辞書屋>列伝-言葉に憑かれた人びと- / 田澤耕. - 中央公論新社 , 2014     北大ではどこにある?
    以前の推薦文に、最近岩波新書(新赤版)がつまらなくなってきた、と書いたが、最近の新書(岩波に限らない)ときたら、もう池上彰、佐藤優、島田裕巳、内田樹ばかり目立つ(少し前ならこれに香山リカも入っていた)。商業的に売れる本を書きたいというのは出版社の本音だろうし、若者の読書離れなどということも言われる中で出版社の新書編集部も大変だろうなぁとは思うが、こうも顔ぶれが変わらないと彼らの熱烈なファンでない限り購買意欲が逆にそがれてしまう。それにしても、この四人はよくも新書の大量執筆ができるもので、その点はうらやましい限りである。

    閑話休題、ここに推薦する新書は、研究上の必要から照井亮次郎という人物のことを追いかけていたときに見つけたものであるが、照井に関する章だけでなく、その他の章でも辞書作りに執念を燃やした人物たちのあまりにも面白く波瀾万丈な物語に引き込まれ、最後まで読み通してしまった。推薦文の「辞書にはドラマがある」というのは、著者の田澤氏が「まえがき」の冒頭に掲げていることばであるが、この本でその言わんとするところを読み取ってみてほしい。田澤氏は、なぜ「辞書編纂者」ではなく「辞書屋」ということばを使ったのかも「まえがき」で明らかにしているが、この本を読めば、その理由に深く納得できるだろう。「終章」には、田澤氏自身のドラマも書かれている。いつか北大からも「辞書屋」になってその人なりのドラマを演じる人間が出るかもしれない。推薦者としてはそれも楽しみなことである。

    登録日 : 2016-06-19
  3. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    私もプロレスの味方です。 
    新日本プロレス12人の怪人 / 門馬忠雄. - 文藝春秋社 , 2012     北大ではどこにある?
    この推薦図書の表題を見て目をむいたそこのあなた、附属図書館の蔵書検索欄に「プロレス」と入力してみるとよい。北大附属図書館には、プロレス関連図書が結構色々あるのだ。つい先日出たばかりの三田佐代子『プロレスという生き方』(中公新書ラクレ)も図書館は入れてくれた。ずっとお堅い本ばかり推薦してきていい加減疲れたというのもあるのだが、プロレスというのは最高のエンターテインメント(の一つ)であって、それについて知ることは自分の世界を広げることになると思い推薦することにした。この本は新日本プロレス(という団体)を中心にして書かれており、既に現役を退いて古希を過ぎても今なお様々な話題を提供し続ける“燃える闘魂”アントニオ猪木から、現役バリバリの棚橋弘至まで12人のプロレスラーの人物像とファイトと、プロレス団体の離合集散を取り上げている。それは、同時にまた僕にとっては小中学生時代、休み時間になると教室の後ろや廊下でいかにしてザ・デストロイヤーの四の字固めや猪木の卍固め、果てはビル・ロビンソンの“人間風車”まで格好良く決めるかに熱中していた同時代の歴史でもある。(ちなみに“人間風車”はリングではない教室の床でやったら大けがをするので実際に決めた奴はいなかった。) 勉強に疲れたらたまにはこういった本も読んでみてはいかがだろうか。

    なお、推薦文に書いた「私もプロレスの味方です。」は、村松友視さんの『私、プロレスの味方です』(角川文庫)-これも図書館にある-を拝借したものであることを付言しておく。

    登録日 : 2016-06-01
  4. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    あなたの知らないディープな大学図書館 
    変わりゆく大学図書館 / 逸村裕・竹内比呂也. - 勁草書房 , 2005     北大ではどこにある?
    北大図書館を頻繁に利用する人や図書館ウェブサイトをよく見る人の中でどのくらいの人が図書館トップページの一番右にある「附属図書館について」を見ているだろうか。図書館ホームページの中で蔵書検索やお知らせと同じくらい閲覧されていいページはこの「附属図書館について」の中にある様々な情報だと思う。それほど更新頻度が高いわけではないが、図書館がどのように北大の研究・教育活動に貢献しているか、そのために職員の方々がどのような仕事をしていらっしゃるかがよく分かる。時間があるときには是非見てほしい。それと関連してここに推薦する本は、大学図書館の現状を理解し、同時によりよく活用する指針を与えてくれる本である。それだけでなく、この本を推薦する意図として、“図書館で働く”ということを将来の人生の選択肢に入れる可能性を考えてみてはどうかと読者に呼びかけることも含んでいる。利用者としての目線だけでなく、運営者としての観点を持つことは、図書館を職場として選ぶことがなくても、図書館との関わり方に新しい方向を開くものであると思う。図書館を利用している人に広く読んでほしいと思いここに推薦する。

    なお、上記の図書館ホームページの「附属図書館について」の中の「採用情報」にある「北海道大学附属図書館の『ひと』と『しごと』」も是非読んでほしい。普段はあまり表から見えないところで働くスタッフの姿が分かる魅力に溢れたページである。

    登録日 : 2016-05-26
  5. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    現代アラブ文学への扉 
    バイナル・カスライン / ナギーブ・マフフーズ. - 河出書房新社 , 1988     北大ではどこにある?
    『千夜一夜物語』以外でアラブ文学を読んだという人は、おそらくごく少数だろう。現代アラブ文学と聞いてもおそらく作家名もイメージも思い浮かばないと思う。かく述べる僕自身も、自分がエジプトに赴任するまでそれらについては全く知らなかった。ここに挙げる『バイナル・カスライン』とその著者ナギーブ・マフフーズについてもエジプトに行ってから周囲の同僚や学生たちに教えられて知ったのだが、その当時既にこの本を含む「現代アラブ小説全集」は刊行されていた。マフフーズは、アラブ世界初のノーベル文学賞受賞者(1988年)であり、僕がカイロにいたときにはまだ存命していて新聞に精力的にコラムなどを書いていた。

    この小説は、現在世界遺産になっているカイロ旧市街(イスラミック・カイロとも言われている)のバイナル・カスライン通りに住む商店主のアフマドとその妻、3人の息子、2人の娘の家族の生き方を描きつつそこにサアド・ザグルールとワフド党のエジプト独立運動という1917年前後の激動の歴史を絡めた大河小説である。家庭内では厳格に家族の上に君臨する父親でありながら裏では女遊びがやめられない因業なアフマドと、その夫にひたすら仕える後妻、反発しつつも父親と同じような人生を歩んでしまう長男、エジプト独立運動に身を投じる次男、エジプトを統治するイギリス人との間に友情を芽生えさせる利発な三男、そして娘たち、周囲の人々の運命が絡まり合いエジプト独立運動を背景に一気に結末へと突き進んでいく。上下二巻の大冊であり、最初のうちは、くどくどしいとさえ思われる心理描写や比喩に読みづらさを感じるかもしれないが、下巻に入ってサアド・ザグルールがエジプト独立を要求するあたりからストーリーは急展開しはじめ、読むのがやめられなくなるだろう。訳者の塙治夫氏は今年亡くなられたが、生前のインタビューでこの翻訳に対する日本人読者の反応について「一言でいえば『失望』です。」と慨嘆していらした。本当にそうした反応しか得られない作品であるかどうか是非読んで確かめられたい。この作品は、読者をマフフーズだけでなく現代アラブ文学に誘う扉となると信じている。

    なお、この標題となっている「バイナル・カスライン」通りは現在ではムイッズ通りという名前に変わっていて、世界遺産登録後は観光地区としてかなり整備されたらしいが、僕が行ったときには古い街並みの中に生活感とエネルギーが渦巻くわくわくするようなエリアだった。もしカイロを訪れる機会があったら足を運んでみることをお勧めする。

    登録日 : 2016-05-23
  6. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    もう今はない旧制高校の青春とは 
    どくとるマンボウ青春記 / 北杜夫. - 新潮社 , 2000     北大ではどこにある?
    僕が大学時代に教えを受けた先生方の半数以上は、旧制高等学校の卒業生だった。旧制高校は、戦後は新制大学(の一部)になり、僕ら新制高校卒業世代は知識としてそういうものがあったという形でしか認識していないのだが、実際に旧制高校生活を送った先生方にはその後の人生のスタイル(というと安っぽく聞こえてしまうが)を決定するような大きな影響力のある教育機関だったらしい。最早体験的に知ることのできない、そうした旧制高校の魅力とそこで学生生活を送った著者自身の内面的な成長過程、そして、思わず笑いを誘う、あるいは人生の意味を真剣に考えさせるエピソードの数々は時代を超えて心に響くものを持っている。

    僕は北杜夫の作品が大好きで、小学校6年生のときに『どくとるマンボウ航海記』を読んでからずっと愛読してきたが、この作品は数ある北杜夫の著書の中で僕にとってはベストワンであり、今でも授業のネタに使ったりしている。是非長く読み継がれる本であってほしいとの願いを込めてここに推薦したい。


    登録日 : 2016-05-15
  7. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    「馬鹿ばかしさのまっただ中で犬死しないための方法」とは何か? 
    赤頭巾ちゃん気をつけて / 庄司薫. - 新潮社 , 2012     北大ではどこにある?
    この小説は、一時期多くの読者の心を捉え、近年また出版社を替えて文庫化されるほどに読み継がれてきた名作である。大学紛争(と言ってももう知識としてしか知らない学生ばかりだろうが)で1969年度の東大入試が中止になるという時代背景の中、東京都立日比谷高校3年生の「庄司薫」君の饒舌的で独白的な文体を軸に綴られたこの作品を高校時代に最初に読んだとき、僕は作者が本当に日比谷高校3年生ではないかと思ったほどである。著者の庄司氏と僕はちょうど20歳の年齢差があるが、僕自身―全盛期末期か凋落期かの違いはあれど―都立高校に在籍し卒業した者として主人公の「薫」君にもの凄く感情移入してしまい、ついに日比谷高校を見物(?)しに行ったのを覚えている(僕は学区が違ったので日比谷高校は受験できなかった)。

    特にこの本に影響を受けたのは、主人公の兄が書いた「変てこな本」、『馬鹿ばかしさのまっただ中で犬死しないための方法序説』に出てくる「どうでもいいことから逃げて逃げて逃げまくる」という“思想”で、主人公の「薫」君はこの“思想”をどう実践するかに悩みつつ自分のあり方を模索していくのだが、僕も僕なりにこの“思想”を実践してみようと色々試みたことがあるし、今でも時々日常がしんどくなるとこのことばを思い出すことがある。その意味で、僕にとっては忘れられない作品であり、既に読んだ人にも新しい読み方の可能性を探してもらえればと思うし、まだ読んでいない人には新しい読書体験となるであろうと思い、推薦することにした。この本が文庫化されたとき(だったと思うが)に著者は「四半世紀たってのあとがき」を書いているが、今回2012年の新潮文庫での刊行に際しては「あわや半世紀のあとがき」を書いている。是非味読してほしい。

    ただ、余計事を書くと、新潮文庫の解説を書いている苅部直氏(この作品の中でネタにされている筑波大学―当時は東京教育大学―附属高校の卒業生)は、「六九年当時の風俗を示す言葉については、調べれば簡単にわかるだろうし、意味を取れなくても物語の理解に大きな支障はない。」と書いているが、あの時代をリアルタイムで生きて、同じ都立高校を卒業した僕は、いくらWikipediaがあると言ってもやはりそろそろこの本にも親切な「注」が必要なのかもしれないと思っており、その点苅部氏との温度差を感じてもいる。

    思い入れが強すぎて推薦文が思わぬ長文になってしまった。ご容赦いただきたい。


    登録日 : 2016-05-15
  8. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    「研究」ということの神髄に触れる 
    師範学校制度史研究-15年戦争下の教師教育- / 逸見勝亮. - 北海道大学図書刊行会 , 1991     北大ではどこにある?
    この本は、僕の専門分野と関わりがあるので読んだものだが、推薦文としては「良書だから読むべし!」としか言いようがない。実は,僕はこの著者である逸見先生(元教育学部長・現名誉教授)の“ファン”なのである。まだ逸見先生がご在職中にこの本を読んで疑問に思った点があったので、直接教えを請う機会をいただいたのだが、逸見先生のご教示、お人柄、生き方に痺れて、ファンになり今に至っている。その意味ではここに推薦するのが遅すぎたくらいだ。こういう推薦の仕方にきっと先生には眉をひそめられるかもしれないが、そこはお許しいただいて、多くの学生に読んでもらいたい。緻密な行論・内容もさることながら、行間から窺われる先生のお人柄に感銘を受けることがあるであろう。

    登録日 : 2016-05-15
  9. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    長編の魅力ここにあり 
    チボー家の人々 / ロジェ・マルタン・デュ・ガール. - 白水社 ,      北大ではどこにある?
    実は僕は長編小説(特に日本の)を読むのは苦手である。登場人物が多くなるので関係を覚えきれない、というより覚えるのが面倒くさいという怠惰な精神のせいなのだが、その結果として山岡荘八『徳川家康』、中里介山『大菩薩峠』、塩野七生『ローマ人の物語』、埴谷雄高『死霊』と、挫折した作品は死屍累々である。その割に西洋文学の長編はなぜか日本文学ほど抵抗なくダンテ『神曲』、デュマ『モンテ・クリスト伯』、そしてこの『チボー家の人々』は結構夢中になって読めた。特に『チボー家の人々』は第一次大戦期のフランスという一種重苦しい時代を描きつつも主人公となる、アントワーヌ、ジャックのチボー兄弟とジャックの友人であるフォンタナンの3人の造形がしっかりしていてこれらの登場人物の魅力に引きつけられて読んだという面が強い。同時に今にして思えば、カトリックのチボー家とプロテスタント(本文ではユグノーとも書かれている)のフォンタナン家の宗教対立を背景とした微妙な絡まり合いが伏線としてこの作品を貫いていることも内容に深みを与えていると感じられる。青年期の多感な若者たちがどのような問題と向き合いいかに成長していくか、は洋の東西を問わず重要なテーマであるが、この作品ではチボー家の父の死を転機として時代が急展開し第一次世界大戦に入っていく。その中で3人が三様に戦争で傷つき命を落とす形で終盤へと一気に展開が加速していく。家族、若さ、男の友情、兄弟愛、男女の愛、宗教をめぐる葛藤、そして戦争に赴く若い命、こういった現代にも通じる問題を飽きさせることのない展開で一気に読ませる著者の筆力にはあらためて感動する。そこには、この本を達意の日本語に訳した訳者・山内義雄氏の多年にわたる努力があったことを忘れてはならない。よい訳者を得て優れた文学が日本語で読めるということの幸せを感じることができるだろう。

    今は白水社Uブックスで読める様になっているが個人的には黄色い表紙の5冊本が懐かしい。

    登録日 : 2016-05-13
  10. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    経済学とは結局何なのか、を考える。 
    戦時下の経済学者 / 牧野邦昭. - 中央公論新社 , 2010     北大ではどこにある?
    この本の表題は『戦時下の経済学者』であり、事実経済学者(の学説)に多くのページを割いている。しかし、この本の主眼とするところは人物伝ではなく、著者自身が「あとがき」で書いているように「経済学はなぜこうなっているのか」という問題意識である。僕なりの読み方で言えば戦時下の総力戦体制の中で個々の経済学者の学説が社会の要請と切り結びながらどうしてその学説のような形を取ることを求められたか、を考えようとするものだと言えるだろう。僕はこの本をノートを取りながら割合丹念に読んだのだが、僕自身の関心はむしろ個々の経済学者あるいは研究機関の時代の中での立ち位置の取り方という点に向いている。それが著者の望む読み方であるかどうかは別問題として、総力戦体制という戦時中の大きな動向を理解する上で貴重な視点を提供してくれる本であると考える。

    登録日 : 2016-05-12
  11. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    岩波新書は不滅です! 
    岩波新書の歴史 : 付・総目録1938-2006 / 鹿野政直. - 岩波書店 , 2006     北大ではどこにある?
    前にこの「本は脳を育てる」に岩波新書(青版)の鈴木八司『ナイルに沈む歴史』を推薦した際に、「最近(特に今世紀になってから)、岩波新書(新赤版)がつまらなくなってきた。」と書いたが、そうはいってもやはり岩波新書は「腐っても鯛」-という書き方は失礼かもしれないけれども-である。「岩波文化人」という、一種の鼻持ちならないエリートを作り出したという問題点はあるが、間違いなく日本近代、あるいは昭和以降の「教養」の担い手として大きな存在感を発揮したことは否定しようがない。この鹿野氏の著作は、岩波新書がどのような価値観を時代に対する「教養」として提供しようとしたかを縦軸(横軸でもいいのだが)とし、その一方で、そうした「教養」の受け手としてどのような読者層を想定しつつ刊行されてきたかを横軸として昭和以降の日本を描き出そうとしたものであって、狭く岩波新書の歴史だけを取り上げたものではない点が大きな特徴である。はじめに書いたように最近の新書赤版は少し魅力が失せていると感じられるのだが、それでもその時々の“現代”を示すバロメーターとして岩波新書は今後も大きな役割を果たし続けるだろう。こういう形での歴史の振り返り方・学び方もあるのだ、ということを強調し、興味ある人に手にとってもらいたいと思って推薦する次第である。

    ちなみに、僕が岩波新書を評価するのは、NHK大河ドラマの翌年の主人公が決まるとその人物に関する本が刊行ラッシュとなる、という他の出版社の新書の滑稽な“お約束”と一切無縁で本を出し続けている、という点にあることを付言しておく。

    登録日 : 2016-05-08
  12. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    「教養」は実践するものである。 
    人生を面白くする本物の教養 / 出口治明. - 幻冬舎 , 2015     北大ではどこにある?
    この本の推薦文は、僕の体験したエピソードの紹介を以てこれに替えたいと思う。

    大学時代に読んだ本の中に、イギリス人は初対面の相手にまず政治の話題を振って、相手がその話題についてこられなかったら「こいつは付き合う価値のない奴だ」と見切りをつける、という趣旨のことが書いてあった。いくら何でもそれは決めつけすぎだろうと思ったものの、そのことを忘れて十年ほどが経過し、機会を得てエジプトに赴任することになった。そして、彼の地でイギリス人のカップルと知り合い、ある日彼らの家に夕食に招待された。席についてまずワインで乾杯となったのだが、一口飲んだところで相手(男性の方)が僕にいきなり、「最近の日本の自民党の内部のごたごたは、あれはどうなってるんだ?」と聞いてきたのである。おそらくそのときの僕は間違いなく「目が点になる」状態だったに違いない。ワインの味も分からなくなり、つたない英語で必死に自民党内の派閥力学といったことについて説明しつつ頭の中では大学時代に読んだ上の話を思い出していたのだが、どうやら見切りをつけられたらしく、その後彼らの家に招待されることはなかった。

    さて、そこで、この推薦文を読んでいるあなたに問いたい。あなただったら、こんなときどう答えてどのように会話を弾ませるか? その答えが分かる人、話題についていく自信がある人はこの本を読む必要はない。そうではない人は読んでみてほしい。「教養」というものが、”身につける”ものではなく(あるいはそれだけではなく)”実践する”ことだというのがよく分かるであろう。

    ただ、この本は出口氏が語ったことをライターの藤田哲生氏が本にまとめたものなので、何回かに分けて聞き書きをしているうちに内容に矛盾を生じているところや突っ込みどころが少なからずある。鋭い読者ならそれに気づくであろうが、そこは大目に見てよいのではないかと思う。また、最後の第10章は、出口氏が立ち上げたライフネット生命保険株式会社の宣伝といった趣なので、読まなくてもよい。標題が標題なのでそれで損をしている部分もあるが、大上段に構えた「教養」論議よりはよほど面白い本である。

    登録日 : 2016-05-02
  13. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    日本語研究の面白さに触れる 
    ヴァーチャル日本語役割語の謎 / 金水敏. - 岩波書店 , 2003     北大ではどこにある?
    最近は学問研究、あるいは学術研究の対象化のペースが極度に速くなっていて、ついこの間「オネエ言葉」という表現が使われ出したと思ったらもうオネエ言葉の研究書が出ている、といった具合である。この本は、様々な職業・性別・時代等々に応じて現れる固有の(と見える)表現を「役割語」という概念によって分析することで見えてくる日本語の姿を明らかにしたものであるが、古今東西の文学作品からマンガ、はては『スター・ウォーズ』から『ハリー・ポッター』まで題材にしてまさに縦横無尽に切りまくる、読み応えのある一冊となっている。日本語に興味はあるが難しそうで、と二の足を踏んでいる人もこの本の展開にはきっと引き込まれるだろう。日本語のみならず言語研究に興味のある人には是非読んでもらいたい。

    なお、付言しておくと、国際本部グローバル教育推進センターの同僚である鄭惠先先生はこの分野の先端的な研究者でもある。この本を読んで引きつけられるところがあったら併せて鄭先生の授業も履修してみてほしい。

    登録日 : 2016-05-02
  14. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    巧妙化・複雑化する戦争ビジネスを知る 
    民営化される戦争-21世紀の民族紛争と企業- / 本山美彦. - ナカニシヤ出版 , 2004     北大ではどこにある?
    戦争に関わる企業と聞くと、兵器・武器の製造売買を行う-古いことばで言えば-「死の商人」が思い浮かぶ。それはそれとして現在もあることに変わりはないが、この本を読むと、思いがけないところで思いがけない企業が、国家(この本で主題的に取り上げられるのはアメリカだが)の中枢部と結託して戦争の後方支援活動などに食い込み利益を上げていることが分かる。さらには、こうした企業が、アフリカなどの資源を保有する後進国で資源ビジネスに目を付けてに内戦=民族対立や紛争を煽っている構図までもが明らかにされる。民族紛争の解決と貧困の撲滅は間違いなく21世紀の世界的課題であるが。北海道大学が、「世界の課題解決に貢献する北海道大学」という目標を掲げている以上、そこに学ぶ者として一度は目を通しておく必要がある本である。

    登録日 : 2016-04-11
  15. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    日本語教育と国語教育をめぐる日中の結びつきを知る 
    現代中国の日本語教育史-大学専攻教育と教科書をめぐって- / 田中祐輔. - 国書刊行会 , 2015     北大ではどこにある?
    僕が30年以上前、初めて日本語教育に関わったときに学校から与えられた教科書は東京外国語大学附属日本語学校編『日本語Ⅱ』だった。内容を一目見て驚いたのは、僕自身が小学校の国語教科書で勉強した文章が幾つか教材として課を為していることだった。当時、日本語教育についての知識も技術もろくになかった僕でも「日本人小学生向けの教科書と外国人留学生向けの教科書が同じでいいものか」と疑問に思ったのを覚えている。しかし、実態としては、日本の国語科教科書の文章は、様々な形で外国人向け日本語教科書に取り入れられていたのである。そして、それは日本国内で出版された教科書だけでなく、海外で出版された教科書でも同様であったことが、この田中氏の研究によって(中国に関してであるが)実証的に明らかにされ、そのような教材選択が為された思想的背景が綿密に解明されている。日本語教育史研究は、近年徐々に研究者が増えているとは言うものの、その対象領域や方法にはまだ大きな進展が見られるとは言いがたい。その中で、この田中氏の著書は、従来の研究の枠を超えて日本語教育史研究を前進させる優れた労作である。序文だけで優に100ページを超えるそのボリュームにまず圧倒され、内外の文献を渉猟して丹念に論を積み上げる田中氏の知的努力は、この分野に限らず人文社会系の学問を志す人に大きな知的刺戟を与えるであろう。僕自身は、同じ日本語教育史研究者としてこの本を読んで完全に打ちのめされて自信喪失状態であるが、将来さらにこれを超える若い研究者の北大からの出現を期待し、多くの人に読んでもらいたいと考える次第である。

    登録日 : 2016-03-15
  16. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    よりよい働き方をどう実現するか 
    個人を幸福にしない日本の組織 / 太田肇. - 新潮社 , 2016     北大ではどこにある?
    この本は、標題だけを見るとかつてのカレル・ヴァン・ウォルフレンの『人間を幸福にしない日本というシステム』の二番煎じのように見えてしまうが、内容は組織論あるいは経営制度論の観点から見た日本人の働き方/働かせ方の批判的考察である。これを読むと、企業も学校も芸能界も自治体も町内会も、およそ人が集まって作られる目的集団がいかに機能不全を起こしやすいかがよく分かる。筆者はその点について、かなり大胆な処方箋を提示してくれているが、欲を言えばもう少し突っ込んで対策を書いてくれるとより面白くなったと思う。自分の将来の仕事のあり方として会社勤めを選択する人だけがいるわけではないだろうが、個人事業主を選択したとしても、そこで働いたことを現金収入に変えるためにはどうしても組織と関わらねばならない。そのときに少しでもよりよい働き方を選ぶにはどうしたら良いか考えるための好適な本である。

    登録日 : 2016-03-14
  17. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    もう一つの日本の理論物理学形成史 
    科学ジャーナリズムの先駆者 評伝 石原純 / 西尾成子. - 岩波書店 , 2011     北大ではどこにある?
    石原純という名前を初めて見たのは、大学時代に西田幾多郎の哲学を勉強していたときであった。西田の弟子であった下村寅太郎の文章中に、日本に於ける相対性理論の紹介者といった形で名前が出ていたのを覚えている。この本では、物理学者、相対性理論の研究者・紹介者という面だけでなく、科学ジャーナリストとしての石原に光を当てて多くのページを割いている。昨今、自然科学研究の世界では研究の確実性やその情報の透明性を揺るがすような事案がいくつか起こった。(勿論、人文社会科学でも同様のことはあったし、今後もあり得る。) このような時代に、科学研究の内実を的確かつ公正に伝える仕事の意味はますます大きくなっていると言わねばならない。北大には、そういった人材を育てるCoStepというプログラムもある。大学・研究室と市民・国民との間の情報の橋渡しを仕事としたいと考える学生には、この本を通して石原の生涯を知り、その精神を学んでほしいと思い、ここに推薦する。

    登録日 : 2016-03-12
  18. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    多文化社会とは? 
    多文化教育の研究ーひと、ことば、つながりー / 朝倉征夫. - 学文社 , 2003     北大ではどこにある?
    「多文化社会」や「異文化(間)コミュニケーション」というのは今や大学教育に於ける”流行語”と言ってもいいと思うのだが、他でもないこの北大で「多文化交流科目」を担当していると、学生の殆どが(場合によっては教員も)「多文化」あるいは「異文化」ということを”外国人(非日本人)との交流”だと思い込んでいる実情が見られ、そのたびになんとかしなければ、と思ってしまう。

    この本は三部から成るが、第一部の総論を除くと、半分を占める第二部は外国(人)に関する「多文化」状況ではなく、この日本国内に於いて文化的背景を異にする人々に関する考察である。日本(という国)が「一国家・一民族・一言語」の国だというオメデタイ-と敢えて書こう-発想を当たり前にものとしている学生諸君には是非読んでいただきたい。日本は既に「多文化」状況にあることが理解できるであろう。しかし、そこで考えることを止めないで、その「多文化」状況を見えにくくしているものは何か、ということにさらに考えを進めてほしい。そこから、新たな日本社会の可能性が開けると思う。

    登録日 : 2016-03-12
  19. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    ことばはどのように情報を伝えるのか? 
    文法と談話の接点-日本語の談話における主題展開機能の研究- / 砂川有里子. - くろしお出版 , 2005     北大ではどこにある?
    この本は、本格的な専門書であるが、丹念に読んでいけばきちんと分かるように書かれた本であり、日本語の働き方について新しい知見を与えてくれるものである。専門的に言えば、談話文法を機能言語学的に考察したものであるが、その内容を噛み砕いて言うならば、日本語の中でどのように情報が情報として現れそれが伝えられていくか、そのメカニズムを明らかにしたものである。将来日本語について研究してみたいと考えている人や、既に談話文法に関心のある人に広く一読を勧めたい。

    登録日 : 2016-03-12
  20. 推薦者 : 中村重穂  所属 : 留学生センター

    西洋哲学の基本の「き」 
    方法序説 / ルネ・デカルト. - 岩波書店 , 1997     北大ではどこにある?
    「われ考える、ゆえにわれあり」や「明晰判明」、あるいは”方法的懐疑”といったことばであまりにも有名な、西洋(近世)哲学の始まりを飾る書である。哲学書というと初めから難しいものと考えて敬遠してしまう向きもあるかもしれない-そのような書物があることを否定はしない-が、この本は、きちんと読んでいけばそれなりに分かるように書かれているものである、同時にまた、西洋近世~近現代の哲学が多くの考えるべき課題をそこからくみ取っていった、西洋の知の基本をなす書物でもある。そのようなものを読んでおくことは、洋の東西を問わず学問を研究しようとするものにとって無駄ではないであろう。

    登録日 : 2016-03-12

page  |  1  | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21


Copyright(C) Hokkaido University Library. All rights reserved.
著作権・リンクについて  お問い合わせ 

北海道大学附属図書館
北海道大学附属図書館北図書館