教員氏名順INDEX
|
page | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 留学生センター
理想郷とは?

|
失われた地平線 / ジェイムズ・ヒルトン. - 新潮社 , 1959
北大ではどこにある? |
ジェイムズ・ヒルトンといえば『チップス先生、さようなら』で広く知られているけれども、この『失われた地平線』は、彼のもう一つの代表作とも言える、不思議な雰囲気をたたえたユートピア小説である。第一次大戦後の動揺するインドからヒマラヤを舞台に、英米人の主人公たちが思いがけない事件に巻きこまれて一種の理想郷的世界に紛れ込んでいく。特に、この小説の後半をしめるラマ教寺院の院長とイギリス人外交官の対話、そこから急転する脱出劇は読むものを引きつけて放さない面白さがある。(この小説に出てくる「シャングリラ」ということばは後に“理想郷”を示す代表的表現となった。) 私事を書いてしまうと、この小説が二度目に映画化された時(1972年)音楽担当がバート・バカラックで、バカラックのファンだった僕は、そちらの理由でこの本を読んでみたいと思い、わざわざ新宿・矢来町の新潮社まで出かけていって文庫本を買い求めたのだった。(ちなみに、この映画音楽のLPのヴォーカルが、先日亡くなったホイットニー・ヒューストンの母親、シシー・ヒューストンである。) この小説は、過去3冊の訳本(渡辺久子訳、増野正衛訳、安達昭雄訳)があったが、さらに昨年秋に池央耿訳が出た。今は池訳しか入手できないけれど、個人的には上記新潮社版の増野訳をお勧めする。 なお、この小説の最初の映画化(1937年)のDVDも北図書館にあることを付記しておく。 |
授業科目名 : 日本語I、日本語II、日本語III、日本語IV
登録日 : 2012-05-01
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 留学生センター
もう一つの「ローマ人の物語」

|
ディスコルシ-「ローマ史」論- / マキアヴェッリ. - 筑摩書房 , 2011
北大ではどこにある? |
| 「ローマ人の物語」といえば塩野七生さんの著作があまりにも有名であるが、この『ディスコルシ』はマキアヴェッリによるもう一つのローマ史である。マキアヴェッリは、この本を書く時に間違いなく彼が生きていた時代のイタリアの運命を考えながら-その姿勢は『君主論』にもつながる-筆を走らせていた。歴史から何事かを学ぶ、ということがどのようなものか、この本から浮かび上がってくるだろう。 |
授業科目名 : 日本語I、日本語II、日本語III、日本語IV
登録日 : 2012-05-01
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 留学生センター
本は脳を鍛える!
|
クアトロ・ラガッツィ-天正少年使節と世界帝国- / 若桑みどり. - 集英社 , 2003
北大ではどこにある? |
天正少年使節と言えば、高校の日本史や世界史で習った記憶があるだろう。これは、博覧強記の著者が、西欧の図書館や文書館に収蔵されている第一次史料を丹念に読み解いて、天正少年使節をとりまく権力者たちとキリスト教信者たち、そしてキリスト教会内の様々な駆け引きを世界史の大きな変動の中に於いて捉えようとした大著である。 ただ、表題に惹かれて読んでみたものの羊頭狗肉の感は否めない。550ページにのぼるこの本を230ページくらいまで読まないとそもそも天正少年使節が出てこないし、彼らのヨーロッパでの体験もむしろ彼ら少年使節よりはキリスト教会と教皇庁、そしてヨーロッパ各国の王侯の思惑に重点が置かれて書かれている。 そのような意味では、表題の主人公がなかなか語られない欲求不満を抱えながら読むことにもなるだろう。推薦文タイトルを「本は脳を鍛える!」としたのもそのようなゆえである。 |
授業科目名 : 日本語I、日本語II、日本語III、日本語IV
登録日 : 2012-05-01
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 留学生センター
誤解の連続は新たな思想を生むか

|
仏教、本当の教え-インド、中国、日本の理解と誤解- / 植木雅俊. - 中央公論新社 , 2011
北大ではどこにある? |
大学で哲学を学んでいた時、先輩から「結局ドイツ観念論哲学というのは、フィヒテとシェリングとヘーゲルがカントをどのように“誤読”したかの歴史だ」と言われて、へえぇ、そんなもんなの、と思ったことがある。この本は、帯に書かれた「壮大な伝言ゲームの果てに。」という一句に惹かれて買ってしまったのだが、読んでみると結構面白かった。その面白さというのは、-著者には申し訳ないけれど-謂わば底意地の悪い面白さで、これまでの翻訳者(=謂わばその学問の世界ではお偉いさん)や、さらには道元や親鸞などの宗祖までもがどのように仏典を誤読してきたかが、宗教的な立場以前の語学的なレベルで暴かれているところにある。 著者自身はそうした表層的でサディスティックな読み方を要求しているのではなく、その誤読に学術的・宗教的にどのような問題が潜んでいるかを明らかにしようとしているのだけれども、僕のような根性の悪い人間は、人の揚げ足をとることの快感をどのように得るかという観点から読んでしまった。そして、人の揚げ足をとれるようになるためには、恐ろしいほどの量と深さの勉強が必要だということを思い知った。そのような意味でも極めて有益だった。 一言言えば、上記のような(真面目な)観点で書かれているので、叙述は、誤読や意訳が仏陀の本意からどのようにずれていったかという方向に向かっている。そのため、タイトルから想像されるような、現在の仏教からさかのぼって仏陀の説いたことを明らかにするという内容を期待して読むと、違和感があるかもしれない。 |
授業科目名 : 日本語I、日本語II、日本語III、日本語IV
登録日 : 2012-05-01
- 推薦者 : 河合剛 所属 : メディア・コミュニケーション研究院
risk life for adventures

|
The Heart of the Great Alone: Scott, Shackleton, and Antarctic Photography / David Hempleman-Adams. - The Royal Collection , 2011
北大ではどこにある? |
| Risking your life for adventure and exploration are not as fashionable these days as it was in the 19th century. Consider, for example, the death of Noguchi Hideyo to yellow fever. Or the death of Robert Falcon Scott and his team in their race to the South Pole. The photographs in this book are rare records of what mankind has done, and perhaps ought to continue to do, in the search of science, curiosity, and glory. |
登録日 : 2012-02-24
- 推薦者 : 河合剛 所属 : メディア・コミュニケーション研究院
breathtaking photography and commentary

|
Shaped by War / Don McCullin. - Jonathan Cape , 2010
北大ではどこにある? |
| Many photography books are mostly photos. This book contains textual commentary that guides the reader through the graphic narrative, and provides valuable insight into what transpired in the mind of the photographer. Don McCullin is a renowned war photojournalist. His Nikon F camera being hit by a bullet is a well-known story. I saw the actual camera at an exhibit in London. |
授業科目名 : english 2, 3, 4
登録日 : 2012-02-24
- 推薦者 : 河合剛 所属 : メディア・コミュニケーション研究院
evolution of portrait photography

|
Queen Elizabeth II: Portraits by Cecil Beaton / Susanna Brown. - V & A Publishing , 2011
北大ではどこにある? |
| See how portrait photography has evolved over the years through the graphic representation of the longest reigning monarch in Britain. Posture, lighting, background, and composition have changed considerably. Another aspect of interest is the transformation of facial expressions. Queen Elizabeth II has had 11 prime ministers so far starting with Winston Churchill when she was 25. The maturing and aging of a experienced monarch makes a fascinating pictorial record. |
登録日 : 2012-02-16
- 推薦者 : 河合剛 所属 : メディア・コミュニケーション研究院
think hard, act decisively

|
カラー図解 ストップ原発〈1〉大震災と原発事故 (全4巻) / 新美景子. - 大月書店 , 2011
北大ではどこにある? |
Japan lacks investigative journalism. Scientific journalism is almost as scarce. Read this series of 4 illustrated books for children. Familiarize yourself with the theory, history, objectives, advantages, and costs of nuclear energy. You may wonder why you knew so little before picking up these books.
I vehemently oppose nuclear power plants. You may agree or disagree with me. Either way, you owe it to yourself and the world to learn all about the issue, particularly the aspects that the government and industry strive to hide. |
授業科目名 : english language
登録日 : 2012-01-11
- 推薦者 : 岸本晶孝 所属 : 理学研究科
日本社会の病い

|
まやかしの安全の国 / 田辺文也. - 角川SSC新書137 , 2011
北大ではどこにある? |
去る3月11日の地震・津波による福島第一原発の事故は様々な疑問を投げかけます。事故の発生という事実に直面してからでは遅いといわれそうですが、原子力に携わる人々や事故に対処する政府関係者や事故の直接の当事者などの個人的資質にも疑念を呈したくなりますし、それを許容する社会の制度にも不信を抱かざるをえません。この本はそういう疑問に答えてくれそうですし、考えるきっかけを与えてくれそうです。以下、著者のあとがきより引用します。
・・・・・原子力のような巨大システムの安全確保に不可欠なのは、設備の運転や保守に携わる人のシステムに対する深い理解であり、そのために必要なことは、現場の人たちに「科学するこころとちから」を培うことだ、と考えてきました。しかし今さらながら気がついたのは、研究者・学者にその「科学するこころとちから」が失われているという惨状でした。とくに民主主義を根底から否定するような情報統制に口をつぐむ・・・・・・この二つ(科学的思考と民主主義)が欠如した「原子力村」とは、日本社会のさまざまな「村」の典型に過ぎなく、日本社会の構造的な歪み、換言すれば日本社会の「病」の縮図なのであって、すべての日本人にとって決して他人事でないのだ、と思います。・・・・・・・
|
授業科目名 : 微分積分学
登録日 : 2012-01-06
- 推薦者 : 小泉均 所属 : 工学研究院
これだけあるタバコの百害

|
タバコやめますか人間やめますか / 広島県医師会. - ごま書房 , 1992
北大ではどこにある? |
| 1992年初版の古い本であるが、健康の専門家である医師が、一般向けに、きちんとしたデータに基づき、タバコの有害性、タバコによって引き起こされる疾患、禁煙法について、わかりやすく解説している。この本を読みタバコの有害性を理解し、タバコについて興味を持っている人は、喫煙始めることをやめ、すでに喫煙している人は、喫煙という悪い習慣をやめて、卒業していってほしい。タバコは、百害あって一利無しである。タバコやめますか、人間やめますか?答えは明白である。 |
登録日 : 2011-12-22
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 留学生センター
文章を書くことが苦手な人に安心を与えてくれる本

|
「書くのが苦手」をみきわめる / 渡辺哲司. - 学術出版会 , 2010
北大ではどこにある? |
今学期(2011年度第2学期)から、文章表現が苦手な人を対象にした「一般教育演習」を開講したので、その準備のため過去1年かけて、いわゆる「文章読本」的な本を36冊ほど読んでみた。(実は、こういうことはすでに小説家の斎藤美奈子さんがやっていて、その成果は『文章読本さん江』(筑摩書房)で公にされている。) この本は、その中でも「苦手」という心理がどうして生じているのかを明らかにして、具体的にどのような対策を採ればそれが克服できるのかを書いている点でもっとも参考になったものである。
ただ、学生向けの本というよりは教師向けの内容であるため、いわゆるハウツー物にはならないが、自分は文章を書くことが苦手だと感じている学生のみなさんに、実はそうでもないんだ、と感じて文章表現/自己表現する勇気を持ってもらえる本ではないかと思い、ここに推薦することにした。
ちなみに、36冊読破した結果は一言で言うと「笑止千万」であった。例えば、ある本は文章の構成として「起承転結」を勧め、他の本は「起承転結」なんか止めてしまえ、と書いているし、またある本は接続詞を使って文の関係を明確化せよと書く一方で、他の本は接続詞はうるさいから控えよ、と書く。本当に「文章読本」の著者は罪作りなものだと実感した次第である。
本書の他に唯一推薦できるのは、戸田山和久『論文の教室』(NKH出版)。多くの場合、「文章が苦手だ」という人は、「何を/どう書いたらいいかわからない」と言う悩みを抱えているものだが、戸田山さんのこの本は、書くことを見つけるための目の付け所、考え方、論理展開の種類まで親切に書いてくれている。併せて一読をお勧めする。 |
登録日 : 2011-11-14
- 推薦者 : 河合剛 所属 : メディア・コミュニケーション研究院
Meticulous study of a piece of historical architecture

|
フランク・ロイド・ライトの帝国ホテル / 明石 信道、村井 修. - 建築資料研究社 , 2004
北大ではどこにある? |
After many years of wishing, some months ago I finally visited the old Imperial Hotel, now relocated to the Meijimura open-air museum in Inuyama, Aichi. I sat in the hotel lobby for 2 hours to soak in the atmosphere.
This book explains the history, design, and philosophy of the Imperial Hotel and the architect behind it. I am no fan of Frank Lloyd Wright as a family man (he deserted his first wife because he became infatuated in another woman; shame on him!). Nor am I impressed with how he treated his clients (cost over-runs were commonplace -- one client remarked "We had an unlimited budget, and we exceeded it" -- and many clients were shocked to receive bills for unsolicited "gifts" sent to them by Wright). But his designs have continued to fascinate me.
This book is an in-depth treatise on Wright's planning and execution. Rare photos and architectural drawings are found throughout the book. Those of you who have read an overview of Wright's designs will be pleased to find a detailed explanation of a building that was a cornerstone of his career. |
授業科目名 : English Online (English II)
登録日 : 2011-10-03
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 留学生センター
『聖書』成立のドラマに迫る

|
聖書の起源 / 山形孝夫. - 筑摩書房 , 2010
北大ではどこにある? |
山形孝夫氏の本の中では、過去に『砂漠の修道院』をこの「本は脳を育てる」に推薦したことがある。あの本が砂漠の修道院に生きる修道士達の人間ドラマとして読めるとすれば、今回推薦する『聖書の起源』は、『聖書』という信仰の書が現実の一つの書物として成立していく過程に込められた(ナザレのイエスや福音書記者達の活動を含めた)様々な事象の展開としてのドラマと読めるだろう。要となるのは『聖書』を古代オリエント世界の神々との関係-ある意味ではパワーゲームと言い換えても良い-の中で形成されたものとして読み解こうとする意図であり、その中で、ナザレのイエスがいかにして「イエス・キリスト」となっていったのかが明らかにされていく。『聖書』の中の謎めいたたとえ話が持つ古代オリエント世界の奥行きが解き明かされる過程はきわめて興味深い。原著(講談社現代新書版)は30年以上前に刊行されたものであるが、今読んでも面白さは全く変わらない 興味を感じた読者は、さらに同じ著者の『治癒神イエスの誕生』や『聖母マリア崇拝の謎-「見えない宗教」の人類学-』(どちらも図書館にある)も読んでみてほしい。
|
授業科目名 : 人間と文化
登録日 : 2011-01-04
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 留学生センター
「田辺元ルネサンス」のために

|
田辺元哲学選I~IV(全4冊) / 田辺元. - 岩波書店 , 2010
北大ではどこにある? |
前にこの「本は脳を育てる」に西田幾多郎の『善の研究』を推薦したことがある。ところが、日本のアカデミックな哲学界では、西田は何かと話題にもなり研究対象にもなるのに、その謂わば批判者であった田辺元については(同じく批判者であった戸坂潤と比べても)圧倒的に研究(あるいは言及)が少なかったし、むしろ色々な意味で批判的に見られすぎたり西田との対比(それもマイナスの)で捉えられすぎたりしてきたように思われる。私事で恐縮だけれども、僕も院生時代に西田哲学と田辺哲学の対立点について研究発表をしたが、聞き手の殆どが西田哲学の方に関心が強い人たちだったのであまり相手にしてもらえなかった記憶がある。過去、筑摩書房から『田邊元全集』は出版されていたし、辻村公一編『現代日本思想体系 田辺元』や中埜肇篇『田辺元集』(いずれも図書館にある)、そして氷見潔や中沢新一の研究書もあったが、16年前、僕が北大に赴任してきた時にはここでは(なぜか)農学部図書室に全集第3巻だけがぽつんとあるような状態だった。図書館の方々のご尽力でそうした状況は改善されてきたが、田辺哲学がそれ自体の価値を本格的に研究されるようになるのはまだこれからであると思われる。今年の後半になって、一気に4冊、田辺哲学の重要なエッセンスが文庫版で刊行された。初期の、まだ西田の影響下にあった頃の論文も再刊が望まれるところではあるが、日本の近代哲学についての関心が高まり始めている現在、田辺の仕事を曇りのない目で評価し、その成果を検討するためにも、また、外来の知的営為である「哲学」を日本ですることの意味を考える上でも、哲学・倫理学専攻の人々だけでなく多くの人に読んでもらいたいと思い、ここに推薦する。
|
授業科目名 : 人間と文化
登録日 : 2011-01-04
- 推薦者 : 千葉惠 所属 : 文学研究科
惹きこまれ一気に読める素粒子宇宙論入門

|
宇宙に終わりはあるのか?素粒子が解き明かす宇宙の歴史 / 村山斉. - ナノオプトニクス・エナジー出版局 , 2010
北大ではどこにある? |
| 評者の書架には素粒子論や宇宙論の基本書、入門書が何冊かほこりをかぶっている。本書は稀なことにも「分かる」という感覚を頁毎に持続しながら、惹きこまれて一気に読むことができた入門書です。150頁の小著ということもありましょうが、評者には幸いな出会いをもたらしてくれ、あいまいで雑然としたなまかじりの知識に秩序と生命を与えてくれました。書名副題にあるように、著者は極微の素粒子の世界の解明が130億年の宇宙の構造と歴史の解明の手掛かりであることを明晰かつ簡明にそして説得的に展開しています。物理学のこの領域においては何が問題になっており、どのような理論が解として立てられ、実験により検証され疑いのないものになっていくかが、歴史的な展望のなかで理論と実験のバランスのよく取れた記述と図解により提示されています。「素粒子は・・すべての自然事象の基本になっている粒子です。宇宙の始まりでは、宇宙自身が小さかったので素粒子が主役の世界でした。その素粒子たちのふるまいが、なぜ宇宙に銀河ができたか、それから私たち自身の存在、つまり、暗黒物質の起源と、なぜ物質と反物質の違いができたかということに関わっていると考えられます」(p.129)。なお日本のノーベル物理学賞受賞者たち(湯川、南部、小林・益川理論)が連続的に位置付けられ、彼らの仕事がどれだけ画期的なものであるかも分かりやすく臨場感をもって描かれています。確かに、ユニークな発想の連続です。物理の思考が、一般的にもその通りなのですが、問いをどのように提示するかに、その解明の道筋が依拠しているそのような思考であることがわかります。個人的には四つの力の統一理論の方向性について理解が進み喜んでいます。ともあれ、初めて宇宙論、素粒子論に挑戦する学生諸君に薦めると同時に、また何度も挑戦しつつも挫折した学生諸君には諦めずに本書により再挑戦を薦めます。 |
授業科目名 : 思索と言語
登録日 : 2010-12-08
- 推薦者 : 千葉惠 所属 : 文学研究科
哲学の始原がよくわかる

|
Definition in Greek Philosophy / ed.David Charles. - Oxford University Press , 2010
北大ではどこにある? |
| 本書により哲学の揺籃であるギリシア哲学において、とりわけソクラテスがこだわった事物の同一性とその認識の問題がプラトン、アリストテレスそしてストアにおいてどのように理解され、哲学理論へと展開されていったかをテクストに即して理解することができる。周知のようにソクラテスは会う人ごとに、勇気とは、節制とは正義とはそして幸福とは「何であるか?」を尋ね、共に探求した。当時の人々同様多くの人が持つ哲学の理屈っぽさのイメージはこのソクラテスの問答の持つ吟味、論駁の詳細さそして厳密さに起因しているように思われる。しかし、本書によりこの「何であるか?」の問いが明晰な仕方でほぐされ再提示されるとき、ソクラテスは何かゆきあたりばったりに論駁し相手をへこませているように見えるその営みが実はその後の哲学の営みの基本的な諸問題を提示していた根源的な営みであったことを知ることができる。ウィトゲンシュタインが'Identity is devil'と叫んだが、この同一性の問題こそたとえばプラトンのイデアやカントの「もの自体」を要請せざるをえない超越論的圧力の原動力なのである。編者D.CharlesのIntroductionは現在他の誰にも書くことができないと思われる周到で興味をそそる論述である。推薦者もアリストテレスにおける「何であるか?」の理論的分析が、述定の範疇、存在者の範疇さらにはものそれ自体としての「本質(何であったかということ)」として提示され、その後の哲学の営みを規定したことを論じている。本書により哲学は単に理屈ではなく、ソクラテスが生涯かけて探求したように、事柄そのものを探求する勇敢な営みであることが理解されることを願う。 |
授業科目名 : 思索と人生
登録日 : 2010-10-16
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 留学生センター
類まれな人間観察の鋭さ

|
君主論 / マキアヴェッリ. - 岩波書店 , 1959
北大ではどこにある? |
マキアヴェッリあるいは『君主論』というと、後世に染みついた「権謀術数を弄する奴」というイメージが浮かぶが、実際の彼はそういうことを中心的な思想として言いたかったわけではない、というのが今日では一般的な理解となっている。この本は時として“政治思想の古典”などと言われるが、そういう読み方を一旦脇に置いて、彼がこの本の中でどのように人間を描き出しているかを読み取っていくと意外に面白い。それも、表だって書かれている様々の君主ではなく、名前すらも分からないような一般人や兵士たちを、国や君主にとってどのような存在と見ていたかに焦点を当てて読むとこれがまた面白いのである。是非彼の鋭い人間観察眼を追体験して、この古典の別の一面を発見してほしい。 ただ、歴史的な背景が分かりにくいところもあるので、家田義隆『マキァヴェリ-誤解された人と思想-』(図書館にある)を参考にするとよいと思う。さらに、塩野七生『わが友マキアヴェッリ-フィレンツェ存亡-』(これも図書館にある)も今年になって新たに新潮文庫から3巻本で刊行されたので、一読をお勧めする。 翻訳はいろいろあるが、岩波文庫の黒田訳(1959年改訳版)と河島訳(1998年)を読み比べた限りでは、(イタリア語が読めないので文法的な正確さについては何も言えないが)河島訳は半分が註と解説でいちいち参照していたら煩わしいし、一文や修飾節が長かったりして日本語として読みにくいところがある。黒田訳は、(何しろ初訳は1935年だから)ことばはいかにも古めかしいところがあるが、それなりの趣がある。個人的にはこちらを勧めたい。
|
授業科目名 : 人間と文化
登録日 : 2010-09-13
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 留学生センター
「哲学」のススメ

授業科目名 : 人間と文化
登録日 : 2010-08-17
- 推薦者 : 中村重穂 所属 : 留学生センター
高校で読まされてウンザリした人に敢えて今勧める

|
舞姫 / 森鴎外. - 筑摩書房 , 1995
北大ではどこにある? |
今回、この「本は脳を育てる」に推薦された本を全部見てみた。(僕は別として)北大の優秀な先生方が思い入れ充分に推薦しておられるのだからそれなりに読む価値があるのだとは思うけれども、なぜか古典と言われる作品が洋の東西を問わず少ない。僕も書いたことがあるから他人のことをあげつらってはいけないのだが、何となく新刊書の紹介のようになっている観がある。古典は高校までの間に読んでいるはずだから、今更勧める必要もないという考え方もあるかもしれないが、古典が古典と言われるほどまで時代を超えて生き続けるのは、人間の成長とともに様々な新しい読み方を汲み出すことができるからだと僕は思っている。そこまで読み継がれてきたのだから中身自体は古くさいのが当たり前なのだ。その古くささの向こう(あるいは奥)に何か光るものが見え(た気がす)るから、人は古典を読み続けるのだと思う。 そこで『舞姫』である。これは、僕が高校生時代には-今もそうらしいが-高校の教科書に載っていて、現代国語の授業でいわば無理矢理読まされたものである。文体はわかりにくいし、内容は湿っぽいしで、おまけに担当した教師が、この作品を、山縣有朋をモデルとする天方伯爵即ち権力者に弱みを握られて首根っこを掴まれた哀れな男・太田豊太郎=森鷗外自身の慨嘆の書であるという解釈をしたものだから、もう全くウンザリしてしまった記憶がある。最近この歳になって再読する機会があったのだけれども、前より数段面白く読んでいる自分に気がついて、高校時代の嫌悪感は何だったんだろうと思い直している。今の僕は、これを太田豊太郎と相沢謙吉の「男の友情」-しかも『ヰタ・セクスアリス』ともつながる一種の疑似同性愛的な関係-の物語だと解釈している(余談だが、山本鈴美香の『エースをねらえ!』も、岡ひろみを主人公とする“スポ根”漫画というよりは、宗方仁と桂大悟の男の友情の漫画だと思っている)。これはあくまで一つの解釈に過ぎないが、高校時代には思いつかなかったこうした解釈がいまできることが古典の一つの魅力だと思う。僕と同じように高校時代に教科書で読まされてウンザリした人には、今すぐでなくてもいいからいつか再読することを勧めたい。 テキストは各種あるけれども、注釈の親切なちくま文庫版『森鷗外全集1』を推奨する。
|
授業科目名 : 人間と文化
登録日 : 2010-07-28
- 推薦者 : 佐藤淳二 所属 : 文学研究科
21世紀の人間は、ポスト・マラルメ主義者とならねばならない!

|
詩・イジチュール / マラルメ. - 筑摩書房 , 2010
北大ではどこにある? |
ポスト・マラルメ主義とは何か? それは「従って」を切断する戦いの行動原則であり、革命理論である。しかし、その理論はまだその全容を現してはいない。若い世代がそれを実現していくことを期待されているのだ。 その来るべき理論は、原因理由を表す接続詞で繋がる連鎖を革命的に断ち切り、世界を原因結果の連鎖、必然性の連関から解放する文化的政治的運動原理とならねばならない。それがポスト・マラルメ主義の根幹でなくてはならない! 「従って」は、われわれのあらゆる認識、文化、ひいては科学を形成する根幹の装置であるが、ここに爆薬を仕掛けた危険きわまりない詩人がマラルメであった。「従って」をラテン語ではIGITURという。フランス語読みすれば「イジチュール」となる。この主人公イジチュール「従って」君は、世界が理由と根拠によって隈無く組織化されたことを感じ、それに閉塞している。偶然はどこにあるのか? 現実界(le REEL) は、ついにわれわれに偶然の出来事を通じて援助の手をさしのべてくれるのか? 今夜、深夜ゼロ時の時間を告げる鐘とともにその真実が明かされよう・・・
かつて、マラルメを読むことは秘儀伝授に等しい困難さを伴っていた。注釈書から注釈書へとわたりあるき、たった一行を読むために数週間呻吟し、その果てにゼミの準備をしても菅野昭正先生(『ステファヌ・マラルメ』は世界最高水準の研究書である)が演習で示された読みにはただ驚くばかり、ひたすら打ちのめされるということの連続であった。しかし、それも過去のこと、昔の物語だ。今の学生たちには整備された書物が身近となり、しかも日本語で読めるのである! この書物の深い迷宮に入るとき、脳は自然に宇宙の逆巻く波と巨大な渦巻きに直接に接続する・・・かもしれない。 ともあれ大脳=詩、大脳と詩が一体となる作品、そのような作品が、マラルメと共にこの世に姿を現したのは事実である。そして21世紀のわれわれはマラルメ後の世界を生きる必要がある。マラルメの後に生まれただけではマラルメ後を生きることはできないのだ。ポスト・マラルメであるために、マラルメを通過すること、それが求められているαでありωである。全世界のポスト・マラルメ主義者よ、団結せよ!
|
授業科目名 : 芸術と文学
登録日 : 2010-07-02
page | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |